Ishibashi Mail Magazine

もう一度、この一枚を聞け! バックナンバー

「イシバシ・メールマガジン」初回発行以来、継続している人気コーナー”この1枚を聞け”の全てのバックナンバーを掲載しました。アルバム発売当時の時代背景やエピソードも満載!ややマニアックな一枚をもう一度要チェックです!


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この一枚を聞け! [TAKING THE LONG WAY / DIXIE CHICKS]



 そのコーナーを始めた時、一つの決まりを設けていた。それは一度紹介したアーティストは重複して紹介しないことである。より多くのアーティストを知っていただきたいという考えであった。しかし、今回はどうしてもこのアルバムを紹介したかったのです。

 アメリカでは絶大な人気を誇る”ディクシー・チックス ”の2006年に発売された4枚目のフルアルバム「TAKING THE LONG WAY」がそのアルバムです。

 このアルバムのヒストリーは2002年に発売された前作「HOME」から始まるのだ。アルバムを発売の翌2003年に”Top Of The World Tour”と題して、バンドはツアーに出る。事の発端は3月に行われたロンドンでのライブの最中であった。リードヴォーカルでもあるナタリー・メインズが同郷であったブッシュ大統領の批判をMCでしたのだ。このときアメリカはイラク侵攻に力を注いでおり、その国の中心人物を批判した事で、チックスはこの後、強烈にアメリカ国民より批判を浴びる事となる。

 ツアーは大成功を収め、この模様はライブDVD「Top of the World Tour」にもなっているほどである。その反面、前作「HOME」ではグラミー賞を総なめにし、地位も名声も手に入れることが出来たチックスであったが、ツアーが終わってみると前記のことが原因で、アメリカ国内では悪人扱いされるほど評価を下げてしまったのである。CDの不買運動はもちろんの事、中にはチックスのアルバムをブルドーザーで踏むつぶすシーンもあるほどであった。

 ナタリーはその後謝罪をしたが、アメリカ国内で戦争反対の声が上がるまで、そのバッシングは続いたのである。その中で作成されたアルバムがこの「TAKING THE LONG WAY」である。

 アルバム内の歌詞はどれをとってもメッセージ性のあるものばかり。その時、起こっていた事、細かな気持ちがしっかりと楽曲にのせられているのだ。英詩を訳すのが面倒だという方は是非に日本盤を購入し、歌詞を見ながら曲を聴くと更にそのよさが伝わると思う。

 アルバムに参加しているドラマーもレッド・ホット・チリ・ペッパーズ、チキンフットのチャド・スミスと意外な人物である。攻撃的なドラムばかりと勝手に解釈していたが、このアルバムではサウンドの要といってもいいほど存在感を持っている。

 今回紹介したかった最大の理由がアルバム最後の曲にある。2005年のアメリカで発生したハリケーン、”カトリーナ”の救済チャリティーソングとして歌われた”I Hope”がそれだ。その歌詞が非常にいまの日本に伝えたい内容に聞こえたのです。ちなみに哀愁おびたギターソロはジョン・メイヤーが弾いています。

I hope
For more love, more joy and laughter
I hope
you'll have more than you'll ever need
I hope
You'll have more happy ever afters
I hope
We can all live more fearlessly
And we can lose all the pain and misery,
I hope I hope
and we can lose all the pain and misery

I hope, I hope

ありえない程の大きさの災害が起こってしまった日本。”I Hope”はそんな傷ついた日本の人たちにとても希望となるような歌詞に感じたのです。先日、テレビで被災地の避難所である女性が被災者の方たちに、トランペットで音楽を聞かせていたのだ。自身も被災者なのに音楽で勇気を与えられたらとその女性は言っていた。今の被災地の方々には余裕はないかもしれないが、こんな時だからこそ好きな音楽を聴くことも希望となるようにも感じたのだ。がんばろう日本! そしてこの1枚を聞け!

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