Ishibashi Mail Magazine

もう一度、この一枚を聞け! バックナンバー

「イシバシ・メールマガジン」初回発行以来、継続している人気コーナー”この1枚を聞け”の全てのバックナンバーを掲載しました。アルバム発売当時の時代背景やエピソードも満載!ややマニアックな一枚をもう一度要チェックです!


目次に戻る

魅惑劇 / NOVELA


 70年後半に関西で活躍していたキッスばりのハードロックバンド、高橋良郎率いる「山水館」と
平山照継率いるプログレの「シェラザード」が79年に合体して出来たバンドがこの「NOVELA」である。
共に関西では単独でも全く問題ないくらいの人気を集めていたが、その両バンドが合体したことで
さらに人気は急上昇。その人気は東京にも飛び火し、デビュー・アルバムであるこの「魅惑劇」は
とてつもない売れ行きであった。

 80年に「NOVELA」がデビューした時代はテクノ・ポップが流行り始め、音楽そのものがニュー・
ウェイヴに押されがちな時代で、ハードロックなどが活躍していくには少々肩身が狭い時代でも
あった。しかもこの「NOVELA」ときたらヒラヒラのド派手な白い衣装に、中性的なメーキャップ、
ロンドンブーツも履いていて、ヴィジュアルの前身ともいえるようなバンドであった。
くわえてプログレ色を濃くしているので曲が長い!そんな時代に反したバンドであったが、これまた
大ヒットであった。ライブ会場は何処も満杯、ファン層も広がる一方だったのである。

 そしてこのファンも一風変わった層であったに違いない。自分もその一人であったが、男性は皆
ロンドンブーツ(物凄いカカトが高いブーツです)を履き、ジュラルミン・ケースに好きなバンドの
ステッカーを貼りまくって持ち歩く。女性はレースがヒラヒラしたヴィオロンというブランドの服を
まとい、やはりジュラルミン・ケースを持ち歩くという、はたから見ると異様な光景であった。

 そしてこのアルバムの特徴は先ほども触れたが曲が長い。起承転結になっており、LPで言うB面には
たった2曲しか収録されていなかった。その2曲目のタイトル曲でもある”魅惑劇”はこのアルバムを
象徴するほど完成された曲である。この時代に14分ほどの曲をアルバムに入れるなんて、物凄く度胸が
あったとしか思えないほどである。長い曲はこの曲だけでなく、10分前後の曲がほかにも2曲収録され
ており、全6曲という少なさでもある。しかし同年にセカンドアルバム「IN THE NIGHT」を発売するが
このアルバムには更に長い”回想のかけら”という17分もの超大作が収録されていると言う凄さ!
また、この「魅惑劇」のアルバムジャケットもかなりのアートで、元キング・クリムゾンのピート・シン
フィールドのソロアルバム「STILL」のジャケットを描いた、”Sulamith Wulfing”である事も付け加え
ておこう。

 そして恥ずかしい話であるがこの当時私は「NOVELA」のファンクラブに入っていた。ファンクラブに
入るのは結構好きで「外道」、「BOW WOW」、「片平なぎさ」、そしてこの「NOVELA」に入っていた事
がある。この間、このファンクラブで限定販売された大阪でのライブ映像を久しぶり見たのだが、これが
またとんでもなくカッコよく、今でもまるっきり通用しそうなアグレッシブなものであった。
しかし収録がベータであった為、危ないと思いDVDにおとしたほど古い映像だったのです。

 バンドはメンバーチェンジをした後、84年に発売したライブアルバム「フロム・ザ・ミスティック・ワ
ールド」を最後にバンドスタイルを大きく変更する。この頃から私も聞かなくなってしまったが、案の定
その後2枚のアルバムを発売後、86年に解散をしている。在籍したメンバーはそれぞれにいろいろなバンド
を結成及び加入していった。最近でも個々に活発な活動を続けていると聞いている。機会があったら
またライブにでも足を運んでみたい。とにかくこの1枚を聞け!