この一枚を聞け![LITTLE GAMES / THE YARDBIRDS]


 今回紹介するアルバムは第1次ブリティッシュ・インヴェイジョンの代表格バンド、THE YARDBIRDSが1967年に発売したラスト・スタジオ・アルバム、「LITTLE GAMES (邦題:リトルゲームズ)」です。

 1960年代、英国のカルチャーミュージックが米国に進出していく様を“ブリティッシュ・インヴェイジョン”と言われています。その代表的なバンドはビートルズ、ストーンズ、アニマルズ等ですが、その中に今回紹介するTHE YARDBIRDSも含まれています。ビートルズのデビューは音楽シーンにとってとてもショッキングな事で、特にアメリカへの進出は当時脅威さえ感じられました。

 しかし、THE YARDBIRDSにはさらに特記するべきことがあるのです。このバンドから後に世界を震撼させるギタリストが3名も排出されている事です。1人目は1963年から65年まで在籍していたエリック・クラプトン。実に元祖ハードロックバンド、“クリーム”を結成する前にこのバンドに在籍していました。二人目がジェフ・ベック。1965年から66年まで在籍し、この時名曲“Train Kept A Rollin′”を世に広めています。そしてラストが後にレッド・ツェッペリンの中心人物、ジミー・ペイジであります。66年から68年までTHE YARDBIRDSのギタリストを務めました。しかも1966年においては、ベックとペイジが当時にバンドに在籍していた時代もあるのです。ビックリですよね。

 THE YARDBIRDSはボーカルであるキース・レルフが中心人物なのでありますが、ほぼギタリストで有名になったバンドと言っても過言ではないと私は思ってます。音楽性はロックバンドではありますが、極めてPOP路線を走ると言った感じで、ギターが前面に出ているという訳ではありません。ただ歌っているバックでさりげなく弾くギターソロなどはなかなかカッコいい物があるんです。

 特にこのアルバムはジミー・ペイジがギターでありますから、ギターソロなどもツェッペリンに通じる所も多々あります。その証拠にツェッペリン時代にペイジのギターソロ部分に多用された“White Summer”がこのアルバムには収録されています。そうです!あのインドっぽいフレーズのアコギ曲ですね。聞き終わるとツェッペリンの“Kashmir”が始まりそうな感じなんです(笑)ただ、メロディーはあくまでPOP路線であるためそのギャップがこのバンドの魅力とも言えるかもしれませんね。

 このアルバムはTHE YARDBIRDSのラストアルバムです。中心人物のキース・レルフが脱退し、新たにバンドを作り活動を始めたからです。ただレコード会社と契約が残っていたため、バンドを一定期間継続する必要があり、残されたジミー・ペイジは新たにメンバーを集め、NEW YARDBIRDSという名前でツアーを行います。そう、このバンドこそがデビュー前のレッド・ツェッペリンなのです。NEW YARDBIRDSのツアー演奏曲目はまだ当時未発表であったツェッペリンの曲が演奏されたそうです。なんかとても歴史が感じられてイイっすよね!

 それからのツェッペリンの快進撃は皆さんもご存じであると思います。しかし、その原点はこのTHE YARDBIRDSにあったと思うとまた真面目に聞きたくなるもんですね。そしてジミー・ペイジと言えば、日本のジミー・ペイジこと“Jimmy Sakurai”の大活躍が目まぐるしいです。リットーミュージックから自伝である「世界で一番ジミー・ペイジになろうとした男」を出版後、本家ジョン・ボーナムの息子であるジェイソン・ボーナムと活動を共にし、2019年全米をツアー中です。凄いですね!

 現在、アメリカではヴィンテージ・ロックのトリビュートバンドの活躍が目立ちます。日本では少しコミカルに表現されているトリビュート・バンドですが、アメリカではやはり真剣に向き合ってる感がハンパありません。その分見応えも素晴らしいのだと思いますね。そんなこと感じながらまた、このアルバム聞くとします。とにかくこの1枚を聞け!!