この一枚を聞け![CAPTAIN BEYOND / CAPTAIN BEYOND]


 今回紹介するアルバムは。第1期ディープパープルに在籍していたヴォーカリスト、ロッド・エバンスがパープル脱退後に結成したCAPTAIN BEYONDのファーストアルバム、「CAPTAIN BEYOND(邦題:キャプテンビヨンド)」です。

 そもそもロッド・エバンスを知っている日本人なんているのだろうかと言う位、マニアックな人物であることは間違いありません。1968年にディープ・パープルがデビューします。しかし、デビュー時は全くハードロックではありませんでした。キーボードにジョン・ロード、ドラムにイアン・ペイス、ギターにリッチー・ブラックモアに加え、ベースはニック・シンパーとヴォーカルにロッド・エバンスという布陣で、デビューアルバム「SHADES OF DEEP PURPLE(邦題:ハッシュ)」で世に出てきました。

 1968年、ハードロックという文化は生まれつつある時代でありましたが、70年代ほど盛んではありませんでした。パープルもどちらかと言うと、ポップスに近いロックと言った感じで、ジョン・ロードのオルガンが前面に出た音楽性でありました。アルバムの邦題にもなった“Hush”という曲は、デビュー曲にもかかわらず、ビルボードにTOP10入りしたのは、実に快進撃であったのです。その証拠に69年に行われていたクリームのフェアウェル・ツアーのサポートをパープルが務めていたのです。

 今回紹介するアルバムはその売れているのか売れていないのか解らない時代に、ディープ・パープルのヴォーカリストを務めていた、ロッド・エバンスがパープル脱退後に作ったバンドのデビューアルバムなのです。前置きをじっくり説明しないとこのバンドには華のある人が居ません(苦笑)。ギターにはラリー・ライノ・ラインハルト、ベースにリー・ドーマン、ドラムにボビー・コールドウェル。と言ってもAORで一世を風靡したボビー・コールドウェルとは同名異人です。ギターのラリーとベースのリーは元アイアン・バタフライと言うサイケ・バンドでプレイしていました。

 そしてこのCAPTAIN BEYONDの音楽性と言ったら、ロッドが在籍していたパープルと同じで、ハードなのかハードでないのか解らないバンドなんです(苦笑)。まぁロッドがパープルの在籍していた期間はわずか1年。しかしその1年の間にパープルで3枚のアルバムをリリースしているのが凄いところ。4か月で1枚のペースって有りえないですよね。そのパープルでの経歴を土台に作られたこのアルバムは、実に構成とかが第1期のパープルに似ています。

 ここまでとりとめの無い話をすると、何故このアルバムを紹介したのか解らないとお思いでしょうが、それがこのアルバムの良いところでもあるのかもしれません。過去の栄光を持っているからと言って、必ずしも良いアルバム出来るとは限らないと言う見本みたいなアルバムなんですね。確かに4曲目の“Mesmerization Eclipse”のギターリフのカッコ良さや、7曲目の“Frozen Over”などはユーライヤ・ヒープっぽいハードな曲なんですが、何となくどこかで聞いたことのあるような曲なんです。

 その証拠にCAPTAIN BEYONDは1973年に2枚のアルバムを残して自然消滅しています。やはりバンドの方向性というのは重要であることを思い知らされるのです。正に“B級バンドの中のB級バンド”なのですが、私はそこがまた良かったりするんですね〜。しかし、往生際が悪いのはその後、数回にわたって再結成をしている事なんです(笑)。

 イイ音楽ばかり聞くのもイイ事ですが、たまには「なんで??」と思うような音楽を聞くのも、更にイイ音楽を見つける近道かもしれません。そんな思いを感じながらまたこのアルバム聞くとします。とにかくこの1枚を聞け!!