この一枚を聞け! [VIENNA / ULTRAVOX]


 今回紹介するアルバムは、1980年に発売されたイギリスのニューウェイブ・バンド、ULTRAVOXの4作目のアルバムであり、出世作とも言われている「VIENNA(邦題:ヴィエナ)」です。この年代に良くありがちな変な邦題は珍しくついていません(笑)

 わたしが初めてULTRAVOXを知ったのは、1979年に初来日を果たしたTHIN LIZZYの公演ででした。この年に発売した名盤「BLACK ROSE」のワールドツアーで来日することになり、初めてこの目でゲイリー・ムーアを観れる、と喜んでおりました。しかし、来日公演少し前にゲイリ・ームーアがナント脱退!!! ショックを隠せず会場である中野サンプラザに向い、ライブが始まると出てきたギタリストは3人でした。スコット・ゴーハムはもちろん解りましたが、あとの二人は全くわかりません。

 実はその二人の内の一人こそが、ULTRAVOXのギタリストであり、ヴォーカリストでもあるミッジ・ユーロであったのです。意外と言ってはナンですが、このミッジ・ユーロがTHIN LIZZYになかなか溶け込んでおりまして、いい味出してたのです。当然ながらBACK TO ROOTするのが非常に好きな私としては、このミッジ・ユーロが在籍しているULTRAVOXを知りたくなり、初めて買ったのがこのアルバム「VIENNA」でありました。

 ジャンルでいえば当時流行っていたニューウェイヴとも言いましょうか、新しいパンクロックみたいな感じで、ポストパンクなんて言われていました。と言っても全くパンクの要素はありませんが、新しいムーブメントが生まれまくっていたイギリスにとっては、いつ出てきても不思議ではない新しい音楽だったと思います。

 1曲目の“Astradyne”はいきなりシンセ全開でプログレっぽいインストナンバー。嫌いじゃありません! そして2曲目ではいきなりシャープなギターカッティングから始まる“New Europeans”。この曲は日本でもだいぶヒットしましたので覚えている紳士淑女が多いかもしれません。時代はテクノポップや第2次ブリティッシュ・インヴェイジョンが始まった頃ですので、シンセやエレクトリックドラム等が蔓延した時代です。その中でもバンドらしさをまだまだ残しているのが、ULTRAVOXだと確信しているのです。

 今回、このアルバムを紹介しようと思ったきっかけは、休みの前夜に久しぶりに夜更かしをし、テレビを見ていたところ「シング・ストリート 未来へのうた」と言う映画がやっておりました。見るつもりはなかったのですが、オープニングにいきなりMOTORHEADの“Stay Clean”が流れてきたのです。オッと思いしばらく見ていると、1985年のアイルランド・ダブリンを舞台にした青春音楽映画でありました。この映画が実に面白く、劇中に出てくる音楽が正にデュラン・デュラン、ヒューマン・リーグといった第2次ブリティッシュ・インヴェイジョンの音楽ばかり!

 何故かそこで私の中に浮かんだのがULTRAVOXだったのです。映画の中の主人公が実にULTRAVOXっぽいイメージで、唄い方なんかもミッジ・ユーロっぽく描かれていました。物語は主人公の少年たちがロックに憧れ、バンドを組み、バンドを通じて成長していく姿がよく描かれています。大不況下であるダブリンに住む青年たちが、海を渡り、音楽の聖地であるロンドンを夢見る姿がとても心地良かったのですね。

 そう思えばULTRAVOXを思った時点で、ミッジ・ユーロを初めて観たのは、アイルランド・ダブリンの英雄であるTHIN LIZZYであるし、何か繋がってる感があるなと感心するのは私だけでしょうか(苦笑) このアルバムはもちろんのことですが、映画「シング・ストリート 未来へのうた」というのもチェックしてみてください。とにかくこの1枚を聞け!!