この一枚を聞け! [CAROLINA COUNTY BALL / ELF]


 今回紹介するアルバムは、2010年に他界してしまったメタル界の重鎮、ロニー・ジェイムス・ディオが70年代初頭に結成していたバンド、ELFの1974年にリリースした通算2枚目のオリジナルアルバム「CAROLINA COUNTY BALL(邦題:キャロライナ・カウンティー・ボール)」です。なお、邦題は「L.A.59」という時期もあったそうです。

誰もが知っているメタル・ヴォーカリストの一人、ロニー・ジェイムス・ディオが組んでいたバンドってどんなバンドなんだろうと思いますが、ハッキリ言ってメタルではありません(笑)一応、カテゴリーはハードロックであったようですが、このELFは、ロックンロール・バンドです! 似てると言えば、ロッド・スチュワートのフェイセスや初期のブラック・クロウズのようなバンドなんです。

 1960年代後期にバンドを結成し、バンド名をいろいろ変えて1972年にELFとして初のアルバムを出します。このバンドの恵まれている事と言えば、この時にディープ・パープルのベーシストであるロジャー・グローバーに気に入られ、プロデュースを買って出てくれたこと。それに加え、ディープ・パープルのツアーにサポートバンドとして採用されたことが、名前を上げる機会となった事です。この時、ロニーはナント、ヴォーカルとベースを担当していたようです。

 74年になるとロニーはヴォーカルに専念し、キーボードにミッキー・リー・ソウル、ドラムにゲイリー・ドリスコール、ベースにクレイグ・グルーバー、そしてギタリストにスティーブ・エドワーズという布陣でこのセカンドアルバム「CAROLINA COUNTY BALL」のレコーディングに入って行くのです。当然、プロデューサーはロジャー・グローバーです。

 仕上がったアルバムは正にロックンロールアルバム! 1曲目の“Carolina County Ball”は、ホンキートンクなピアノがカッコいいミドルテンポのロックンロール。4曲目の“Happy”はブルージーなスローバラード、そして7曲目にはその後を示唆するような“Rainbow”というタイトル曲は収録されています。ロニーがいるのだからキーボードはハモンド・オルガン全開と思われがちですが、キーボードのミッキー・リー・ソウルはピアノに徹しているところもこのアルバムの良いところですね。

 75年に入るとディープ・パープルにも危機が訪れます。この年、リッチー・ブラックモアがバンドを脱退し、自身のバンドであるRITCHIE BLACKMORE’S RAINBOWを結成します。脱退と同時に水面下で進めていたのが、ロニーとの共作でした。そしてその楽曲を演奏していたバンドこそがELFだった訳です。もはやELFではなく、リッチーのバンドと化したその音楽性は紛れもなくリッチー・サウンドであったのは言うまでもありません(笑) 数年の間にバンドの方向性やサウンドまで大きく変えてしまうリッチーはやはりスゴイ人なんだと痛感するわけです。この事から「リッチーはELFを乗っ取った」という話がこの時代の“ロック話あるある”でした。

 実は今回、BURRN! 誌とのコラボで、編集長であるKAZ HIROSEのメタルトークショーが8月(大阪)、9月(東京)で行われます。しかもトーク内容の中心がDEEP PURPLE、RAINBOWやIRON MAIDEN、JUDAS PRIESTといった英国HR/HMであります。しかも誌面には書けなかった取材秘話も多く語ってくれるそうです。この辺の新たな情報もきっと聞けることでしょう。是非ご参加くださいネ!

BURRN! X Ishibashi Music PRESENTS Ultimate Metal Talk Show feat. KAZ HIROSE
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そして、私が所有しているこのアルバムのCDのライナーノーツはナント、KAZ HIROSEでありました。なんと奇遇な話でしょうね。感動しつつ再度聞きこむとします。とにかくこの1枚を聞け!!