この一枚を聞け! [BLAST OFF! / STRAY CATS]

BLAST OFF! / STRAY CATS
 今回紹介するアルバムはブライアン・セッツァー率いる、 STRAY CATSが1989年に発売した通算4枚目のオリジナルアルバム「BLAST OFF! (邦題:ブラスト・オフ)」です。

 日本でも人気の高いSTRAY CATSは1979年にデビューし、ボーカル&ギターのブライアン・セッツァー、ベースのリー・ロッカー、ドラムのスリム・ジム・ファントムからなるトリオバンドです。70年後期、一世を風靡していたパンクムーブメントが衰退をみせはじめた時、ロカビリーとパンクとニュー・ウェイヴを足して3で割ったようなこのバンドがロンドンから登場します。アメリカのバンドでありながらロンドンからデビューさせるなどと言うところも新しいプロモーションであったに違いありません。

 バンドが持つファッションセンスや新しいロカビリー・サウンドから、STRAY CATSは“ネオ・ロカビリー”なる新しい音楽ジャンルを築きました。楽器においても非常にインパクトがあります。まず、ギターのセッツァーは1950年代に活躍していたエディー・コクランなどが使用していたグレッチ6120を弾きこなし、ベースのリー・ロッカーはウッド・ベースにピックアップを付け、スラップ奏法で弾きまくる。そして、ドラムのスリム・ジム・ファントムにいたっては立奏で、バスドラム、スネア、シンバル1枚という最低限のKITで演奏すると言う、今まで見た事の無い編成も非常に話題となりました!

 私が初めてSTRAY CATSを耳にしたのは1983年に米国カリフォルニアで行われた伝説のフェスティバル「USフェスティバル」です。3日間開催されたメインDAYの1日目、「ニュー・ウェイブDAY」の出演者として演奏した時でした。何十万人のオーディエンスの前で、前記のようなシンプルな楽器で演奏する彼らは全くもって衝撃でした。

 しかしバンドと言うのは生き物であって、このバンドはたった3枚のオリジナルアルバムを残して1985年にあっけなく解散してしまいます。実際は83年頃から殆ど活動を止めていたので、ファンにとってはフェイドアウトのような不思議な感覚であったと思います。実際、耳にした「USフェスティバル」での演奏は活動停止の間際だったという事になります。しかし、バンドは生き物なのです(笑) 1989年に彼らは帰ってきました! その再結成第1弾のアルバムこそがこの「BLAST OFF! 」であります。

 1曲目からThis Is STRAY CATSの曲が続きますが、お気に入りは4曲目の“Gene And Eddie”! エディー・コクランとジーン・ヴィンセントの名曲をうまくつないで1曲に仕上げている器用なミックス曲です。また、6曲目の“Bring It Back Agein”は多分皆さんどこかで聞いたことがあるくらい有名な曲です。PVも存在しているので是非観てください。とにかく全編にわたりゴキゲンなグレッチ・サウンドと軽快なスタンディング・ドラム・サウンドが入り乱れています。しかも、一番長い曲でも3分半くらいとコンパクトに収まっているのも聞きやすい点でありますネ。

 しかしこの後、バンドは1992年に再び活動を辞めてしまいます。バンドはやはり生き物なんですね〜(笑) 基本、欧米ミュージシャンの解散や引退ほど信じられないものはありませんから!

 そして2018年2月、STRAY CATSのスポークスマンであったブライアン・セッツァーが自身のバンド、ブライアン・セッツァー・オーケストラで来日します! ロカビリーは基本でありますが、更にホーンセクションを加えパワーアップしたバンドは圧巻のステージを展開してくれるのは間違いないと思います。さらにSTRAY CATSの曲なんかも演ってくれたら非常にうれしいですよね! しかも、今回は全国7か所もまわるとのことです楽しみです。きっとまたあのグレッチ.サウンドをガッツリと聞かせてくれるでしょう。それまでこのアルバムを聞くとします。とにかくこの1枚を聞け!!