この一枚を聞け! [HORIZON / CARPENTERS]

HORIZON / CARPENTERS
 今回ご紹介するアルバムはアメリカの兄妹ポップデュオ、CARPENTERSが1975年に発売した通算6枚目のオリジナルアルバム「HORIZON(邦題:緑の地平線〜ホライゾン)」です。

 1970年代、数多くのロックスタイルが生まれた時代に、ポップスというカテゴリーで最もアメリカを震撼させたポップデュオ、CARPENTERSはヴォーカル&ドラムのカレン・カーペンターとピアノとコンポーザーの兄リチャード・カーペンターからなる兄妹デュオなのです。

 デビューは1969年。世はフラワームーブメント全盛の時代で、街にはヒッピーが溢れ混沌とした時代でしたが、その中で異色を放ったポップデュオが有名になるには、さほど時間はいりませんでした。1970年に発売した2ndアルバム「CLOSE TO YOU (邦題:遙かなる影)」は全米で大ヒット! ここからCARPENTERSの快進撃が始まります。

 その快進撃の源の一つはツアーにあると言われてます。CARPENTERSは1971〜1975年まで毎年200公演近くのツアースケジュールを組んでいました。この地道な活動こそがアルバムヒットにつながったとも言われています。

 「HORIZON」の前作である、アルバム「NOW & THEN(邦題:ナウ・アンド・ゼン)」は、前述の地道な活動が日の目を見た証拠でもあり、全世界で大ヒットしたモンスターアルバムと言えます。もちろん日本での人気もこのアルバムから拍車がかかったのです。

 CARPENTERSのアルバムの特徴は全曲オリジナル曲ではなく、自分たちなりにアレンジを加えたカヴァー曲を数曲加えるのがパターンとなっています。この「HORIZON」もイーグルスのカヴァー“Desperado”、ニール・セダカの“Solitaire”、ビートルズもカヴァーしているマーヴェレッツの“Please Mr. Postman”等が収録されています。

 特に私が素晴らしいと思う曲はナントいっても“Solitaire”です! カレンの独特な高い声から魅力ある低い声までが存分に聴ける曲であり、なによりもとても素晴らしいメロディーラインなのであります。原曲も聞いてみたことがありますが、明らかにニール・セダカを超えていると私は思うのです!!

 また、2曲目に収録されている“Only Yesterday”もカレンの声質がしっかり聞ける曲で、ドライブするときに流れていたら最高な曲でもあります。

 冒頭にも書きましたがカレン・カーペンターはリード・ヴォーカルでもありますが、ドラマーでもあるのです。その実力はヴォーカリストがとりあえず叩いてると言うレベルでは全くなく、マーチングから学んだ基礎がその実力を底上げしているのです。幾つかYoutubeにドラムソロ映像が上がっているので、こちらも要チェックですね。ホントに凄いです!! それに負けずと兄のリチャードはソングライターであり、コンポーザー、プロデューサー、ピアニスト、コーラスと一人何役も務めるマルチプレイヤーであります。マジでなんて兄妹なんでしょう(笑)

 また前作の「NOW & THEN」までは、ほぼ全曲カレンがドラムを叩いていましたが、このアルバムから数曲別のドラマーに叩かせて収録しています。そのドラマーこそがエリック・クラプトンが在籍していたDEREK AND THE DOMINOSのジム・ゴードンなのです。なかなか面白いつながりですね。

 しかし、CARPENTERSはこのアルバムを発売後に失速し始めます。その大きな原因はカレン・カーペンターの拒食症による体調不良でした。体力を落とし、あれほど重点を置いていたツアーも70年代後半には全く行わなくなります。すると兄のリチャードも薬物依存となり、全く勢いを失った兄妹に待ち受けていたのは、1983年のカレンの死去でありました。なかなか上手く行かないものです。

 しかし、音楽と言うものは残り続けます。あの素晴らしいカレンの歌声と完成されたメロディーラインはいつでも聞けるのですから! とにかくこの1枚を聞け!!