この一枚を聞け! [BIRDS OF FIRE / MAHAVISHNU ORCHESTRA]

BIRDS OF FIRE / MAHAVISHNU ORCHESTRA
 今回紹介するアルバムはアメリカを代表する超技巧派ギタリスト、ジョン・マクラフリン率いるMAHAVISHNU ORCHESTRAが1973年に発売したセカンドアルバム「BIRDS OF FIRE(邦題:火の鳥)」です。

 MAHAVISHNU ORCHESTRA(マハヴィシュヌ・オーケストラ)やジョン・マクラフリンと言われても、ピンンと来ないと言う方が日本ではほとんどではないかと思います。ただ、バンドメンバーの個々の活躍や名前を聞けばなるほどという方が多いのがこのバンドの特徴ですね。アメリカではデビューの1970年からジャズを母体としたロックから“ジャズ・ロック”などと言うカテゴリーになっていたと思いますが、私は明らかにこのバンドはプログレッシブ・バンドとして認識してします。

 1960年代後期から1970年代後期まで、イギリスは正にプログレッシブロック・ブームでした。そのバンドの一部がアメリカに進出したことから、アメリカでもプログレッシブ・ブームが出来たと思っております。その、真っ只中に居たアメリカのバンドこそが、このMAHAVISHNU ORCHESTRAなのです。

 バンドの中心人物はギターのジョン・マクラフリン。そのマクラフリンがマイルス・デイビス・バンドでプレイしている頃の友人、ドラムのビリー・コブハムと結成したのがMAHAVISHNU ORCHESTRAです。名前の由来は当時、マクラフリンが信仰していたヒンドゥー教からもらった名前(MAHAVISHNU)がそのままバンドに使われているのは有名な話なのです。

 このアルバム発売時のバンドメンバーはギターにマクラフリン、ドラムは巨匠ビリー・コブハム、そしてキーボードには後にジェフ・ベックと共演し有名になるヤン・ハマーが参加しています。このメンバーにベースのリック・レアードとヴァイオリンのジェリー・グッドマンを加えてサウンドを作っています。

 アルバムは1曲目からそれぞれの演奏技術が極限まで引き出され曲ばかりです! 1曲目の“Birds Of Fire”は変拍子の嵐! よくぞここまで合わせらるなと言うのが正直な感想(笑)。2曲目はマイルス・デイビスへ捧げた曲なのか“Miles Beyond”では、中盤にハチャメチャな即興が入るし、7曲目の“One Word”に至っては激長のベースソロをスタジオ収録盤に入れてしまう潔さ!! こんなやりたい放題のアルバムが発売当時、アメリカののジャズロックチャートの上位に居られたという事が、正にその時代の自由さを象徴しているかのように思えるのは私だけなんでしょうか(笑)

 また、マクラフリンは意外に知られていませんがWネックを駆使して弾いていたギタリストとしても有名です。やはりWネックと言うとジミー・ペイジというイメージがありますが、このマクラフリンも器用に使いこなしています。その音色は勿論、このアルバムでも聞くことが出来ます! 初期はGibsonのEDS-1275を使用していましたが、後に自身のシグネチャーモデルを作らせて使っていました。興味のある方は画像検索してみてください。なかなか濃いギターです!!

 そして私が初めてジョン・マクラフリンを実際に観ることになるのがこのアルバムが発売された8年後の1981年。当時、組んでいた強力アコースティックギター三人衆の一人として来日! 一人がフラメンコの巨匠、パコ・デ・ルシア。もう一人がフュージョン界の巨匠、ラリー・コリエル、そしてマクラフリンの3人でした。もう凄いのなんのって、テクニックの渦のライブだったことを記憶しています。そんなパコもラリー・コリエルももうこの世に居ません。なんか最近このような話ばかりで残念です。とにかくこの1枚を聞け!!