この一枚を聞け! [SONG OF SEVEN / JON ANDERSON]

SONG OF SEVEN / JON ANDERSON
 今回、ご紹介するアルバムはプログレッシブ・ロックバンド、YESのヴォーカリストでもある、ジョン・アンダーソンが1980年に発売した2枚目のソロアルバム「SONG OF SEVEN(邦題:七つの詩)」です。

 プログレッシブロックにおいて1970年代初期、絶大な人気を誇っていたバンドであるYESのヴォーカリストであった(ある)ジョン・アンダーソンは、1979年に衰退していたプログレに見切りをつけるかのようにYESを脱退しました。このソロアルバムはその翌年の1980年に発売されたのですが、その音楽性はプログレの要素を極力無くしたともいえるアルバムに仕上がったのです。

しかし、ジョン・アンダーソンの声質はYESそのものであり、オンリーワン的なものを持っているのでソロアルバムでありながら、ポップス色が濃くなっても私にはYESに聞こえてしまうのです(笑)。そして、ジョン・アンダーソンの魅力はこの声質にあると言っても過言ではないのですが、好き嫌いがハッキリしてしまう声質でもあるのです。

 また、YESメンバーがリリースしたソロアルバムは、ほとんどと言っていいくらい参加メンバーにYESメンバーを起用しています。それではソロアルバムの意味があるのかと思うのですが、このアルバムには他のYESメンバーは参加していません。バンドを脱退した後ですから無理もありませんが、その辺も興味深い一面でもあるのです。

 その参加メンバーは多くのスタジオミュージシャンが起用されていますが、中でも特筆すべきメンバーはCREAMのジャック・ブルースとHUMBLE PIEのクレム・クレムソンが1曲のみですが参加している事! “Heart Of The Matter”という曲での参加ですが、相変わらずブリブリのベース音と伸びのあるギターサウンドは健在であり、ジョン・アンダーソンとのコラボとしては非常に聴きどころです。しかも、ドラムは若かりし頃のサイモン・フィリップスなのです! また、3曲目に収録されている“Don’t Forget(Nstalgia)”という曲では、今までジョンが歌った事が無かったようなカリビアン調な曲を収録しています。まさに新たな方向性を築き上げようといている感が全開ですネ。

 今回、コラムを書くにあたってCDを聞き直してみたのですが、その全収録時間にもビックリ。9曲収録で39分です。当然ですよね、この時代CD盤はまだ世に出ていない時代で、LP盤が主流の時代です。当然ながらA面、B面に曲が分かれていた時代ならこの収録時間は意外ではありません。現在のCDには80分近く収録されている時代と大きく違うわけです。

 先日、YES feat. Anderson, Rabin & Wakemanのライブを観てきました! まずビックリしたのは、ジョン・アンダーソンの歌唱力! 72才になる現在でもあの声質が健在なのです!! ヴォーカリストほど衰えを感じてしまうパートはありませんが、そんな心配は全くいりませんでした。そして、さらに衝撃を受けたのはリック・ウェイクマンのキーボード。やはりYESサウンドはリック・ウェイクマンでないとダメだと実感いたしました。特にリック独特のMOOGの音は今も昔も変わらないのです。(感涙)。ライブ中盤にはAWBHの名曲、“The Meeting”をジョンとリックの2人だけで披露してくれました。そのあまりにも美しすぎる旋律に涙したのは言うまでもありません!

 また、ギターのトレバ—・ラビンは凄い才能だと思いますが、YESの古い曲を演奏するにはやはりスティーブ・ハウの独特のテクニックが必要と実感しました。クリス・スクワイヤが他界してしまったのですから、今度来日するときにはぜひ仲良くしてオリジナルメンバーで来日してほしいものです。なにせ、1年の間に違うメンバーでYESを2回見ることになってしまったのですから(笑)。

 とにかくこの1枚を聞け!!