Ishibashi Mail Magazine

Ishibashi Mail Magazine Vol.139

この一枚を聞け! [ HIGHWAY / FREE ]



 今回紹介するアルバムは実に短命だったイギリスのバンド、FREEが1970年に発売した4枚目のアルバム「HIGHWAY]です。母国イギリスでは伝説的なバンドですが、アメリカではイマイチパッとしなかったバンドでも有名です。

 FREEの結成は1969年。時代はビートルズ時代から新しい音楽シーンが生まれる変革時期ですが、この時代には後々歴史に刻まれる多くのバンドが生まれてきます。FREEも正にそのバンドの一つで、スポークスマンであるポール・ロジャースは後に世界で指折りのロックボーカリストとなっていくのです。

 このバンドにはもう一人歴史残る人物がいます。それがギタリストのポール・コゾフです。ブルースを主体にしたフレーズは一球入魂で弾くという感じが似合うギタリストです。60年後期はギタリストも才能豊かな人が多く生まれた時代です。ジミヘン、クラプトン、ペイジ、サンタナ、ジョニー・ウインターと挙げたらキリがないほどです。しかし、ポール・コゾフはジミヘンやジミー・ペイジのように華やかなギタリストではないと私は思っています。

 その華やかではないがバックで一生懸命弾いている姿、口をあけ顔をクシャクシャにしながら弾く姿は正にロックギタリストの象徴なのです。しかし彼には大きな弱点があります。それは強烈なジャンキーであること(笑) この時代仕方がないと言えばそれまでなのですが、それが度を越しているのがポール・コゾフでした。後にこの事がバンドに大きく響くことになります。

 FREEと言えば代表作は3枚目のアルバム「FIRE AND WATER」が良く紹介されます。しかし、あえてこの作品を選んだ理由には2曲の存在があります。それが“Be My Friend”と“Love You So”です。

 前作の「FIRE AND WATER」では大ヒット曲“All Right Now ”や“ Mr. Big ”といったヘビーな曲が多く収録されていましたが、このアルバムには“Be My Friend”と“Love You So”といった強力なバラードが収録されているのです。“Be My Friend”はブルースを切々と歌い、“Love You So”で綺麗なメロディをしゃべるように歌うポール・ロジャースがたまらなく素晴らしいのです!!

 FREEは69年〜70年のたった2年の間に4枚のアルバムを発売しています(驚)しかし、ポール・コゾフが演奏できない位のジャンキーになってしまったため、1971年に解散してしまうのです。それぞれがソロ活動に入るころ「コゾフを救おう!」とメンバーが集結。なんと、1972年に再結成するのです。だったら解散するなって言いたいですよね。

 その後、2枚のアルバムを発売しますが、この2枚のアルバムには数曲しかポール・コゾフは参加していません。そうです! ジャンキーから抜け出せなかったのです。悲しい事ですね。1972年、当時人気沸騰のプログレバンド、EMERSON,LAKE & PALMERの来日公演の前座としてFREEは初来日しますが、その公演にもポール・コゾフの姿はありませんでした。そしてバンドは自然消滅・・・ まさにロックです(笑)

 FREE解散後にポール・ロジャースとドラムのサイモン・カークは新しいバンド作ります。それが皆さんご存じのBAD COMPANYなのです!BAD COMPANYが人気が出る一方、1976年にはポール・コゾフが心不全で他界。明暗を分けてしまった結果にロック・ビジネスの怖さこそ感じてしまいました。

 先日、初代ベーシストのアンディー・フレイザーが他界しました。“All Right Now ”のベース・ソロ部をチューニング狂ったまま弾いてるのがとてもロックしていました。最近、この時代に活躍していたアーティストの訃報が非常によく入って来ます。とても悲しい思いと共にこのアルバムをまた聞くとします。とにかくこの1枚を聞け!!
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