Ishibashi Mail Magazine

Ishibashi Mail Magazine Vol.135

この一枚を聞け! [ GTR / GTR ]



 今回紹介するアルバムは1986年に二人のプログレ界を代表するギタリストによって作られたバンド、GTRのファーストアルバム「GTR」です。

 GTRの中心となった2名のギタリストとはYESやASIAで活躍のスティーブ・ハウと元GENESISのスティーブ・ハケットであります。1983年、ASIAの大ヒットアルバム「ALPHA」を発表後、他のメンバーとうまくいかなくなったスティーブ・ハウはASIAを脱退。その後、ソロ活動を続けていたようだが、同じくGENESISを脱退し、ソロ活動を行っていたスティーブ・ハケットと一気統合。プログレのスーパーバンド、“GTR”の誕生となったわけです。

 しかも、プロデューサーはASIAのジェフ・ダウンズを起用し、サウンド面もこてこてのプログレ・サウンドではなく、ASIAにかなり近いPOP路線で挑んできたのです。しかも、バックを固めるメンバーも元マリリオンのメンバー等のプログレ畑の方のみで、その攻め方もASIAと同じでありました。(笑)

 ここまで来るとASIAを続けていればいいじゃないかと思いますが、そこはギタリストが作ったバンドで、フロント2名のギターサウンドが心地よく絡み合う楽曲は非常に新鮮でありました。同じクラシカルなギター弾く二人ではありますが、そのスタイルは明らかに聞き分けられるミックスになっているのも聞き所と言えます。

 ただ聞く人によっては1曲目の“When The Heart Rules The Mind”などは明らかにASIAに有りそうな曲でもあります(笑)。4曲目の”Sketches In The Sun”などはASIAの日本公演でハウがギターソロで演奏していた曲だし・・・これってASIA?? いやいやしかし、3曲目の“Here I Wait”などでは二人のギターソロの掛け合いが聞けるところなどは、やはりこのスーパーバンドならではだと思うのです。

 これは私が思う深読みですが、この時期スティーブ・ハウはやはりASIAを見返しかかったのではないかと思うのです。というか多分、ジョン・ウェットンを見返したかったのではないかと推測します(笑)それくらい似ていると言っても過言ではありません!

 GTRはアルバム発売後、初のツアーに出ます。演奏曲目はGTRの楽曲に加え、それぞれの過去在籍していたYESやGENESISの曲も加え構成され、非常に豪華のセットリストとなりました。この模様は「KING BISCUIT FLOWER HOUR」と言うタイトルでライブ盤化もされているため、チェック是非していただきたい。

 そんな順調に思われたGTRであるが、ツアー終了後にスティーブ・ハケットがあっけなく脱退し、バンドは空中分解!たった1年少々という短命なな活動期間でありました。こんなことってあるんですね。ただ、スティーブ・ハウの経歴を見ると解りますが、何度も同じバンドに加入脱退を繰り返したり、短命に終わらせているバンドは数多くあります。プログレッシブ・ロックの世界ではある意味、オハコともいえる行為なんですよね!(笑)

 その、スティーブ・ハウですが御年67歳! つい先日、YESで来日をしたので見てまいりました。そのギターテクは衰えることなくクラシカルなフレーズを出しまくっていました。YESの名盤、“Close to the Edge”と“Fragile”の完全再現ライブとあって、超満員の会場の年齢層は明らかに高かったのは言うまでもありません。まだまだ現役で弾き続けてもらいたいものです。とにかくこの1枚を聞け!
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