Ishibashi Mail Magazine

Ishibashi Mail Magazine Vol.120

スターキー星のフェンダリアン 〜Talking Of Fender〜 最終回

Fender USA Custom Shop MBS 1956 Stratocaster Relic Black built by Todd Krause



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 みなさん、こんにちはスターキー星です!

 今回紹介するギターはこちら。フェンダーカスタムショップのシニアマスタービルダーであるトッド・クラウスが手がけた1956年モデル・ストラトキャスター・レリックです。

 トッド・クラウスは、私たちがカリフォルニアのコロナファクトリーを訪問しても中々新規でオーダーができないほど超多忙でフェンダー社を代表する「スタービルダー」です。特にエリック・クラプトンやジェフ・ベックのシグネチャーモデルのバックオーダーが多いため、こういったヴィンテージスペックのモデルが入荷するのはかなり久しぶりです。

 彼は1981年にシャーベル/ジャクソンでそのキャリアをスタートし、1991年からフェンダーカスタムショップに加わった大ヴェテラン。マスタービルダーとしての役割をこなしつつ、将来のマスタービルダーとなるべき人材の育成及び指導にあたっています。その大きな体格からは想像がつかないほど、いつも細部まで緻密にしっかりと組み上げてくるビルダーで、エリック・クラプトンやジェフ・ベック、ボブ・ディラン、リッチー・サンボラ、デヴィッド・ギルモアらの専属ビルダーとしても活躍しています。

 このルックスはやはり言わずもがな、あの世界で最も有名なストラトキャスターを彷彿させますね。そう、クラプトンの愛器「ブラッキー Blackie」です。本器には特別にクラプトンの冠がつくわけではないのですが、3ピースの良質なライトウエイト・アルダーボディを使用し、キャビティ内に導電塗料をコートしてノイズ対策をしているところなど2006年に限定製作されたエリック・クラプトン・トリビュート・ブラッキーに準じるところがあります。

 以前、ECシグネチャーモデルを紹介したときにも触れましたが、ミスター・スローハンドの愛器ブラッキーは、1970年頃にテネシー州ナッシュビル(カントリーミュージックのメッカとして有名)にあるSho-Budという楽器店で購入した複数本のストラトキャスターのパーツによって組み上げられたと言われています。文献により諸説ありますが、そこで購入した6-7本のギターのうち、特に気に入った3-4本のベストな部分をEC自身がチョイスして組み合わせたと言われており、一般には1956年製のアルダーボディ、1957年製のネックを組み合わせたフランケンだというのが通説です。今日でこそ黒いフィニッシュというのは一般的ですが、当時製作されていたのはサンバーストが大多数ですので、カスタムカラーのブラックは非常にレアな個体です。

 ECがヤードバーズでプレイしていた1960年代前半のキャリアでは、フィエスタレッドのテレキャスターやグレッチの6120ダブルカッタウェイ、KAYギターJAZZUなどが彼のトレードマークでしたが、ブルースブレーカーズやクリームで人気を馳せた60年代中盤には一転してギブソン・レスポールやSG、335等のセットネックをメインで使用しています。その後、1960年代末からアメリカ南部のルーツミュージック〜スワンプロックへの傾倒が進むとともにフェンダー・ストラトキャスターの使用頻度が高まります。ソロデビューアルバムのジャケットやレイラセッションのブラウニーが特に有名ですね。

 ブラッキーがメインで使用されるようになるのは、1973年1月13日にロンドンでピート・タウンゼント、ロン・ウッドらと共演したレインボーコンサートからのこと。それは当時ドラッグに溺れて心身ともに疲弊しきっていたクラプトンが音楽の世界に復帰するきっかけとなったライブで、「精彩を欠く」と酷評されがちなアルバムですが、私個人としては非常に思い入れが強くマストなアルバムです。それ以降、度重なるレコーディングや過酷なライブツアーで弾き込まれたブラッキーは、フィル・コリンズがプロデュースの「ビハインド・ザ・サン」を発表後、1985年コネチカット州ハートフォードでの公演を最後に表舞台から引退することになりましたが、ルックス・サウンドともにレイドバック期のECを象徴するギターとなっています。AORやレイドバックという言葉で統括してしまうと、クラプトンフリークには好みが分かれるところでしょうが、、私としては、このブラッキーを使用した70年代-80年代前半のECのレコードには本当に名盤しかないと思っています(笑)
 
 そのレジェンダリーなストラトは皆さんご存知の通り、2004年にはクリスティーズのチャリティーオークションに出品され、アメリカの大手楽器店チェーン「ギターセンター」によって95万9500ドル(約1億1,200万円)という超高額で落札されました。やはりクラプトンのミュージシャンとしての影響力は今も昔も凄まじいものです。今年も同じくギターセンター主導で、ビートルズのホワイトアルバムに収録されたWhile My Guitar Gently Weepsの録音で有名なギブソンの1957年製レスポール(通称ルーシー)や、レイラセッションズの1956年製ストラトキャスター・ブラウニーもレプリカが限定製作されましたが発表と同時にお問い合わせが殺到しました。1945年生まれのクラプトンですがまだまだ現役で、今年も4月には2004年以来、4回目となるクロスロード・ギターフェスティバルをマディソンスクエアガーデンにて開催し、大々的な成功を収めております。幼い頃より不遇に苛まれることも多く、非常に繊細で脆い人間だと思うのですが、半面底知れずタフな精神を持っており、人間らしい魅力にあふれているといえるでしょう。

 トッド・クラウスはラリー・ブルックスやJ.W.ブラックらの後継者として現在クラプトン本人のギターを手がけています。その楽器としての完成度の高さについては想像に難くないと思いますし、とりわけ何の説明もいらないと思います。とにもかくにも手に取っていただいて、アンプにプラグインすればすぐに分かります。ギター選びは出会いで、何よりタイミングですよね。同時入荷でフェイデッド3カラーサンバースト/メイプルネックという過渡期の仕様をフィーチャーした1958年モデル・ストラトキャスターも入荷していますのでそちらも要チェックでお願いします。

 コレだけおさえておけば、今日から貴方もフェンダリアン!!

今回で「フェンダリアン〜Talking Of Fender〜」編は終了となります。
次回からは装いも新たに「スターキー星の月刊 GUITAR TALKING」が始まります。
乞うご期待!





<お問い合わせ>


石橋楽器 渋谷店
TEL 03-3770-1484
shibuya@ishibashi.co.jp

<スターキー星:プロフィール>
 プロフェッサー岸本の愛弟子であるデューク工藤に師事、池袋店〜御茶ノ水本店を経て、現在は渋谷店にてインポートギターを担当している。特にフェンダー・ギターへの造詣が深く、日本国内最高レベルのノウハウを持ったスタッフとしてプロダクトスペシャリストに認定されている。彼自身のフェイバリットミュージックはブルースやブルースロックが中心で主に60〜70年代ロックを愛聴。
 皆様がますます充実したミュージックライフを送れるよう、一生愛用できるギター捜しを親切丁寧にお手伝いたします。