Ishibashi Mail Magazine

Ishibashi Mail Magazine Vol.99

スターキー星のフェンダリアン 〜Talking Of Fender〜 第8回

Fender Custom Shop Team Built Custom 62 Stratocaster Fat Neck Relic Old Lake Placid Blue overseen by Paul Waller




 みなさん、こんにちは。最近ダーツが楽しくてたまらないスターキー星です!いよいよ待望のエリック・クラプトン来日公演もスタートしました。そして、何とこのタイミングでフェンダーUSAからECのシグネチャーアンプが発表。チャンプ、デラックスアンプ、ツインアンプをモチーフにした3ラインナップで、御茶ノ水本店にも既にたくさんのお問い合わせ、ご予約をいただいております。デレクアンドドミノスのレコーディングはもちろん、90年代以降ブルース回帰の時期にもクラプトンサウンドとフェンダーツイードアンプは常に切っても切り離せない関係ですので見逃せない新商品です。USAのオフィシャルサイトでバディ・ガイが演奏した動画も見れますのでチェックしてみてくださいね。

 さて、今回ご紹介するギターはフェンダーカスタムショップのチームビルトカスタム1962ストラトキャスター・レリック・オールドレイクプラシッドブルーです。Charモデルのプロトタイプを製作したことで注目を浴びているマスタービルダーのポール・ウォーラーに監修(oversee)を依頼した特注モデルです。

 本器は2009年に惜しまれながらも生産完了となってしまったタイムマシンシリーズの1960ストラトキャスターをベースにしたカスタムオーダーモデルでして、厳選されたオフセットシームのアルダー2ピースボディに、ダーク・マダガスカルローズウッドのスラブボード(厚めのフラット貼りローズウッド指板)をコンビネーションしています。カスタムショップのストラトキャスターは通常2枚の木材をボディの中心部で貼り合わせたセンターシーム構造ですが、その貼り合わせる位置をリアルヴィンテージのように微妙にずらしたのがオフセットシーム。またブラジリアンローズウッド(ハカランダ)に近い特性を持つことで人気の高いマダガスカルローズウッド、その中でも目が詰まっていて特に色濃い雰囲気があるものを指定しているというのもこだわりのポイントです。(本年より、その稀少性から、新規オーダーの際にマダガスカルローズウッドを指定することができなくなってしまいました…)

 そしてここで特筆しておきたいポイントとなるのが、ネックグリップ。通常スラブボードのストラトというのはオリジナルの一般的個体に忠実なスリムCシェイプネックで製作されます。しかし、以前から「もう少しネックが太いものがあれば・・・」というお客様のご要望が多かったため、今回特注で製作するに至りました。そこで、マスタービルダーのジョン・クルーズが2007年のNAMM SHOWのために製作したLMBS 1961 Stratocasterに配されていた肉厚なネックグリップをテンプレートに指定。完成品は、それより若干スリムにアレンジされてはいますが、ちょうど心地良いグリップに仕上げられております。ネックはプレーングレインの追柾目を指定しており、フレットボードはオリジナルフェンダーのタッチフィール/トーンを重視して7.25インチR、そしてヴィンテージサイズのフレットワイヤーをセレクト。これもまた、タッチニュアンス重視のプレイヤーにはベターな仕様かと思います。

 さらに、ピックアップは従来のタイムマシンシリーズよりもターン数を抑えたカスタムピックアップをマウントしています。ですので、高域がスポイルされることなく、ヴィンテージのような自然で良質な木部の鳴り、きらびやかな倍音が存分に実感できます。繊細で敏感なタッチレスポンスが実現されていて、それぞれの帯域が絶妙なバランスのもとブレンドされており、プレイヤーの想像力を最大限にひきたててくれる極上の甘さ・艶があるトーン。このコシのあるサウンドは病み付きです。

 フェンダーカスタムショップのお家芸であるエイジド加工を施したレリック・フィニッシュで、経年変化によりウェザーチェックが入り、味わい深く色焼けした状態を再現するためにカラーサンプルを持ち込んで色味を指定。とことんこだわりを尽くしたスーパー・ハイコストパフォーマンスモデルとなっております。ちなみに当店入荷の一本はピックガードのエッジを滑らかにテーパー加工した通称「マスターグレードカット」を行っておりますので、ストラト好きにはたまらない質感です。

 今回のモデルの監修を依頼したポール・ウォーラー。彼が初めてギターを製作したのは14歳のときだったそうですが、その後、アリゾナ州フェニックスにあるロベルト・ベン・スクール・オブ・ルシアリーでギターの製作を学んでいます。意外にもカスタムショップのマスタービルダーでそのような専門学校で学んだ経歴を持つ人物は異色です。ポールは2003年のフェンダー入社後、カスタムショップですぐに頭角を表し、トッド・クラウス、ユーリ・シスコフ、ステファン・スターンといった超一流ビルダーのもとで長年修行を積んでいます。特に当時のカスタムショップのメンバーの中でリーダー格であったマーク・ケンドリックの助手として数多くの仕事をこなしてきたことが知られていますが、とても気さくな人柄で非常に丁寧・端正な仕事をしてくれます。

 実はポール・ウォーラーのマスタービルダー昇格が発表されたのは、このオーダーツアーでの夕食パーティのときのこと。その翌日のミーティングにて、「マスタービルダーとしての初仕事だけに相当気合を入れて監修してくれるのでは?」という思いを込めてのオーダーだったのですが、その期待に違わず素晴らしい仕上がりのギターです。こうして新たなフェンダーの歴史が刻まれていくのですね。

 コレだけおさえておけば、今日から貴方もフェンダリアン!!




<お問い合わせ>


石橋楽器 御茶ノ水本店
TEL 03-3233-1484
ochanomizu@ishibashi.co.jp

<スターキー星:プロフィール>
 プロフェッサー岸本の愛弟子であるデューク工藤に師事、御茶ノ水本店にてインポートギターを担当している。特にフェンダー・ギターへの造詣が深く、日本国内最高レベルのノウハウを持ったスタッフとしてプロダクトスペシャリストに認定されている。彼自身のフェイバリットミュージックはブルースやブルースロックが中心で主に60〜70年代ロックを愛聴。
 皆様がますます充実したミュージックライフを送れるよう、一生愛用できるギター捜しを親切丁寧にお手伝いたします。