Ishibashi Mail Magazine

Ishibashi Mail Magazine Vol.95

1484.TV タッキーの楽器流行通信 第3回

謎のナビゲーター・タッキーが、話題の楽器、注目の新製品など、毎月プレイヤーのゲストを交えてご紹介します。

LINE 6 POD HD


 “HD”は“ハイ・デフィニション(high definition)”の略語で、“高精細度”という意味を持つ。そんなキーワードをシリーズ名に据えたHDシリーズがPODのラインナップに加わったのが昨年のこと。フロア・ペダル・タイプ3機種が先行して発売され、“HD”という名のとおり、超高精度なモデリング・サウンドで、我々に衝撃を与えた。そのHD300〜500シリーズでは、3年以上の開発期間を費やして完成させたHDアンプ・モデリングと、Mシリーズで搭載されているものと同クラスのモデリング・エフェクターが搭載されたが、その内容をそのままデスクトップ・タイプの筐体に詰め込んだのが、今回紹介する[POD HD]である。PODシリーズと言えば“そら豆型”ボディが最も馴染み深いと言う人も多いことであろうが、ついに真打ちの登場である。今回もギタリストのミサワマサヒロの試奏動画を交えて、見ていくことにしよう。
 


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 LINE 6が初めて作った製品が1996年発売のデジタル・モデリング・アンプ[AxSys 212]で、翌97年に[POD 1.0]を発表。今日では“ポッド”という名称を聞けば、アップル社のデジタル・オーディオ・プレイヤー[iPod]想起される方が多いであろうが、実はLINE 6の[POD 1.0]の方が[iPod初号機]より先にリリースされていたのである([iPod初号機]:2001年発売)。それはともかく[POD 1.0]は、“そら豆”のようなおかしなボディ形状から想像つかないような本格的なサウンドを生み出し、加えて使いやすいインターフェースと相まって、アンプ・モデリングという新境地を開き、大ヒットとなった。その後、デスクトップ型[POD]は、ベース用やモバイル用などを加えながら、アップデートしていった。モバイル用とベース用を含めれば、“そら豆型”ボディのものは今回の[POD HD]が9機種目となる。
説明写真
機種名POD HD
発売年2011年
アンプ・モデル数22
キャビネット・モデル数16
エフェクト・モデル数100以上
定価open price
説明写真






POD 1.0POD 2.0Bass PODPOD xtBASS POD xtPOD X3Pocket PODPocket POD Express
機種名POD 1.0POD 2.0Bass PODPOD xtBASS POD xtPOD X3Pocket PODPocket POD Express
発売年19972000200020022003200720072008
アンプ・モデル数163216322878325
キャビネット・モデル数-161622222416-
エフェクト・モデル数81816496198186
定価65,000円59,800円59,800円75,000円75,000円65,000円21,000円15,000円

 2010年に発売されたHD300〜500に続く[POD HD]シリーズの最新デスクトップ型モデルで、Musik Messe 2011にて初披露された。ボディはお馴染みの“そら豆型”だが、これまで伝統的に赤いカラーリングであったのが精悍なブラックに彩られているところが目を惹く。
 スペックにおいて注目すべきは、LINE 6が3年以上の開発期間を費やして完成させたHDアンプ・モデリングで、HD300〜500では16種が標準装備されたが、本機はさらに、Fender Bassman (“Bright” チャンネル)、Fender Blackface Deluxe Reverb (“Vibrato” チャンネル)、Fender Twin Reverb (“Vibrato” チャンネル)、Line 6 Elektrik、Marshall JTM-45 MkII (“Normal” チャンネル)、Park 75 (“Normal” チャンネル)の6機種が追加された。モデリングに選ばれたアンプのラインナップだが、ヴィンテージものからブティック・アンプまでをカバー。それでもトータル22機種と、デスクトップ型の先代機種[POD X3]が78機種に対し、大幅にアンプ・モデリングの数は減ったが、機種を厳選し絞り込んだことと、[POD X3]より10倍のデータを扱えるパワフルなDSPエンジンを使うことで、高精度で完成度の高いモデリングを実現している。加えてふたつのアンプ・モデルを任意の位置に指定し、ミキシングすることも可能な「デュアル・トーン」機能も搭載。これまでのエフェクターやアンプ・シミュレーターでは作り出せなかった濃厚で密度の高いサウンドをクリエイトすることが可能となっている。
 モデリング・エフェクト数は100種類以上で、いずれもLINE 6が誇るMシリーズ・クラスのものが搭載されている。PODシリーズ代々から受け継がれている、シンプルかつ使いやすいインターフェースは顕在だ。音色や音量のセッティングは専用ノブを回すだけと、アンプ感覚で操作が可能。また大画面LCDディスプレイと、その周辺のボタン・スイッチやコントローラーなどは、HD500と共通したインターフェースで、非常に扱いやすい。
 入出力端子はデスクトップ・レコーディング用途で必要な端子を網羅。出力だけを見ても、ステレオ1/4インチ・バランス出力および、S/PDIF経由で24-bitデジタル・シグナルの送信、USB端子よりDAWへのアクセスなど、充実ぶりが見逃せない。自宅やスタジオなどでの使用はもちろんだが、ボディ構造が堅牢なので、外部フット・コントローラー(FBV MkII )を繋いで、ライブでも十分使えるであろう。

[Specifications]
●HDアンプ・モデル数:22 ●エフェクト・モデル数:100以上(Mクラス) ●最大同時使用エフェクト数:8 ●モデリング・エフェクトの種類/数:ダイナミクス8種、ディストーション15種、モジュレーション22種、フィルター17種、ピッチ3種、EQ 5種、ディレイ19種、リバーブ12種、ボリューム/パン2種、ワウ8種 ●コントロール:ドライブ、ベース、ミドル、トレブル、プレゼンス、ツィーク、ボリューム、マスター・ボリューム、マルチ・ファンクション・ノブ×4、プリセット・ノブ ●スイッチ&ボタン:セット・リスト・ボタン、セーブ・ボタン、ビュー・ボタン、4方向ナビ・パッド、ムーブ・ボタン、エンター・ボタン、タップ・ボタン、電源スイッチ ●接続端子:ギター・イン、ヘッドフォン、アンバランス・アウトプット、FBVペダル端子、USB端子、S/PDIF端子、マイク入力端子 ●電源:DC 9V 500mA、DCアダプター(DC-3g:付属 ●外形寸法:279mm(W)×190mm(D)×89mm(H) ●重量:1.4kg

タッキー
タッキー・プロフィール
1957年 福島県生まれ。
中学1年で初めてギターを弾き、1弦だけで「禁じられた遊び」を弾いて得意げになる。
中学2年からフォークに染まり始め、初めて購入したギターは¥4,500のピアレスのフォークギター。
「F」コードで挫折し現在に至る。


ミサワマサヒロ
ミサワマサヒロ・プロフィール
音楽学校メーザー・ハウスにて、矢堀孝一氏に師事。ギブソン・ジャズ・ギター・コンテストのバンド部門にて優勝を果たす。その後、レコーディングやライブのサポートなどで活躍し、イシバシ・バンド・コンテストのイメージ・ソングの作曲&演奏も担当。現在は女性ヴォーカルを含めた5人編成のバンド、パスピエ(https://www.myspace.com/passepied)にて活動中。さまざまなデモ演奏でも活躍するギタリスト。