スターキー星のフェンダリアン 〜Talking Of Fender〜 第2回
Fender Custom Shop MBS 52 Telecaster Closet Classic Butterscotch Blonde built by Stephen Stern
みなさん、こんにちはスターキー星です!寒暖の差が激しい日が続いておりますが、体調を崩したりしていないでしょうか。ギターのコンディションも変化しやすい時期ですので、プレイしていていつもと何か違う!という違和感がございましたら、お買い上げいただいた店舗までお気軽にご相談ください。
さて、前回のメルマガでもふれましたが、先日受注開始となりましたLUNA SEAのINORAN氏モデルは情報解禁となると同時にご予約が殺到。ただいまイシバシ楽器全店で共通のウエイティングリストを作成し、キャンセル待ちを承っております。直近に差し迫りましたTokyo Guitar Show 2011モデルや、エンドースメント契約が発表されているL'Arc-en-Cielのken氏、Char氏のシグネチャーモデルなども情報が入り次第、ご案内を差し上げますので、ぜひお早めにお問い合わせくださいませ。
それでは、今月の一本をご紹介しましょう。シニアマスタービルダーであるステファン・スターン氏と私が現地工場で直接ミーティングを行いオーダーしたワンオフものの1952年スタイル・テレキャスター・クローゼットクラシックフィニッシュです。
これは言わずもがなですが、テレキャスターといえば、量産システムに適合したソリッドボディ(内部に音響効果を目的とした空洞を持たない)・エレクトリックギターの元祖。1949年にエスクワイヤとしてデビューしたそのモデルは、「板状に削り出した平べったいボディにネックをネジ止めする」という、従来のトラディショナルな楽器のコンセプトを大きく覆す衝撃的なものでした。
「楽器職人」ではなく「ラジオ屋」としてのキャリアを持つレオ・フェンダー氏ならではのユニークな発想のもとデザインされているテレキャスター。当初はそれこそ「便器の蓋」と揶揄されたりもしたそうですが、今日これだけエレキギターが世間に広く浸透し、ポピュラーなものとなりえたのはまさにその合理的な精神の功績と言えます。シンプルな構造ゆえの懐の広さがあり、プレイヤーのタッチによって千差万別なサウンドが繰り出される楽器、そういった意味でも根強いファンが多いギターです。特に、今回ご覧いただいているバタースコッチブロンドでブラックワンプライのピックガードが特徴的な1950年代前半の仕様は、その中でも一番人気の高い定番仕様でしょう。
以上、少し前置きが長くなりましたが、ここでステファン・スターン氏(スティーブ/スティーブンと表記されることもあります)のご紹介をしておきましょう。「シニアマスタービルダー」とはフェンダーカスタムショップにおける究極の称号にあたり、自分自身でマスタービルダーとしての役割をこなしつつ、将来のマスタービルダーとなるべき人材の育成及び指導にもあたっているヴェテラン職人のことを指します。ステファン氏は、ジャクソン/シャーベル社でキャリアをスタートしたあと、1993年にフェンダーカスタムショップに加入。アーチトップ職人界の二大巨匠であるジミー・ダキスト氏やボブ・ベネデット氏に師事した経歴を持つ超敏腕ビルダーです。
昨年、カリフォルニアのコロナ工場にて彼にインタビューしたところ、フェイバリットミュージックは主にカントリーや、R&R、The WhoやLed Zeppelinなどの60-70年代ロック、モータウン系のR&B・ソウルなど。一番お気に入りのギターは故ジョン・イングリッシュ氏が彼のために製作したノーキャスターだそうです。今回特注したテリーは名工ジョン・イングリッシュ氏のノーキャスターをイメージしてもらいながらも、ステファン・スターン氏ならではのバックグラウンドやノウハウ、個性を光らせてもらうというコンセプトでオーダーいたしました。
本人いわく、ステファン氏がギター製作を行うときに最もこだわるのは、ネックシェイプとボディジョイントの精度とのこと。以前タイムマシンシリーズにラインナップされていた51ノーキャスターよりも若干スリムなネックにして欲しいとオーダーしたところ、ローポジションではグリップ感のあるがっちりしたシェイプながら、ハイポジションではやや薄めというオールマイティなスタイルに仕上がっております。ヴィンテージのタッチ・フィーリングを重視した7.25"ラジアスの指板に細めのフレットワイヤーを採用。贅沢にも厳選されたワンピースのアッシュボディに追柾のメイプルネックを配しており、3.08kgという素晴らしいバランスの一本です。セレクタースイッチは即戦力になるようにネックピックアップ〜ミックス〜ブリッジピックアップと切り替わるプレゼント・デイ・ワイヤリング。1950年代からフェンダー社に従事しているアビゲイル・イバラ氏によるハンドワウンドピックアップをマウントしており、非常にタッチレスポンスが良く味と深みのある音色です。
ちなみに、これはちょっとした個人的なこだわりだったのですが、1952年頃のオリジナル・テレキャスターによく見られるマイナスネジ(Slotted Head Screw)とプラスネジ(Phillips Head Screw)が入り混じった過渡期の仕様を忠実に復刻しています。オーダーシートに画像を添付し、一箇所一箇所、ネジの種類を指定したところ、さすが、ステファン氏。しっかりと指定どおりに仕上げてくれました。このあたりもテレキャスターフリークにはたまらないオシャレなポイントです。
ステファン・スターン氏は、近年ではほぼグレッチ・カスタムショップの業務に専念しているためソリッドボディの製作を行うことは非常に稀です。日本国内でも根強いファンが多いマスタービルダーですので、新品中古問わず市場流通はごくわずかです。ワンピースボディならではのワイドレンジで美しく痛快なサウンドは、手にした瞬間にそれと分かる「本物のブラックガード」。この機会を見逃したらきっと後悔するはず…、ぜひ一度このトーンを体感していただきたいと思います。
コレだけおさえておけば、今日から貴方もフェンダリアン!!
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<お問い合わせ> 石橋楽器 御茶ノ水本店 TEL 03-3233-1484 ochanomizu@ishibashi.co.jp
<スターキー星:プロフィール> プロフェッサー岸本の愛弟子であるデューク工藤に師事、御茶ノ水本店にてインポートギターを担当している。特にフェンダー・ギターへの造詣が深く、日本国内最高レベルのノウハウを持ったスタッフとしてプロダクトスペシャリストに認定されている。彼自身のフェイバリットミュージックはブルースやブルースロックが中心で主に60〜70年代ロックを愛聴。 皆様がますます充実したミュージックライフを送れるよう、一生愛用できるギター捜しを親切丁寧にお手伝いたします。
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