Ishibashi Mail Magazine

Ishibashi Mail Magazine Vol.90

この一枚を聞け! [DOWN FOR THE COUNT / Y&T]



 今回紹介するのはベイエリア出身のハードロックバンド、Y&Tの85年に発売された7枚目のアルバム「DOWN FOR THE COUNT」を紹介しよう。

 Y&Tのデビューは意外に早い。1976年、”Yesterday & Today ”という名前でデビューを飾るが2枚発売したアルバムは全く売れず、クラブサーキットを続けていた。81年にバンド名を”Yesterday & Today ”の頭文字をとり、”Y&T”に改名。通算3枚目のアルバム、「EARTHSHAKER」を発売する。

 この頃、イギリスで火がついていた音楽ムーブメント”NWOBHM”(New Wave Of British Heavy Metal)に便乗するような形で、アメリカでもハードロック、ヘビーメタルが流行り始めていた。そのなか、改名したY&Tの「EARTHSHAKER」は玄人ウケするバンドとして注目を集める事となる。当然、日本でもヘビーメタルブームであったため、非常に人気を集めるバンドに上りつめた。

 Y&Tの中心人物はナントいってもギターのデイブ・メニケッティーである。レスポールを持ち、泣きのギターで物悲しいマイナー・フレーズを弾くと言う、全くもって日本人好みのギタリストなのである。このアルバムでも”Hands Of Time”という曲で泣きのギターを披露している。1曲目に収録されている”In The Name Of Rock”はこれぞオープニングという感じのメディアムヘビーのグルーブ感タップリの曲、”Your Mama Don't Dance"はロギンズ&メッシーナが1972年にヒットさせた曲をヘビーアレンジ!これがまたカッコイイんです。

 また、ドラムのレオナード・ヘイズも玄人好みのドラマーで、当時流行っていた2バスではなく頑なに1バスを通し、驚異的なダブルストロークでバンドのグルーブを支えている。しかし、アルバムセールスは前作の「In Rock We Trust 」を大きく下回る残念な結果となっている。俺はいいと思うんだけどな〜!

 80年代中盤に入るとアメリカでも”LAメタル”というブームがはやり、モトリー・クルーやラットといった多くのバンドが世に出てきた。こちらのバンドの多くがアリーナやスタジアムクラスでライブを行うが、Y&Tはサンフランシスコでは絶大な人気であったが、他の地域では前記のバントと比べるとやはちクラブサーキット止まりであった。その辺が不屈の精神というか地道というか私の好きなところでもあるのです。

 バンドはこのアルバムをリリース後、数多くのメンバーチェンジを行い推進力を失い、1991年に解散してしまう。その後、メニケッティーはソロでブルース・アルバム等を作成するがやはり上手くいかなかった。現在までの間に数回の再結成を繰り返している。そして昨年、当社もよくお世話になっているクラブチッタさんがナント、Y&Tを来日させてくれる話を聞いた。仕事でライブには行けなかったが楽しみにしていた。しかし、2011年1月の来日直前にオリジナルメンバーでもあるベースのフィル・ケネモアが肺ガンのため他界してしまった。

 非常にショッキングな事であったが何よりも凄いのは、来日公演をキャンセルせずに代役を立てて公演を行ったということである。精神的にも辛かったであろうがプロというものを大いに感じさせてくれた出来事であった。決して売れまくったアルバムではない。しかしそのプロ根性を聞くには非常に良いアルバムだと思うのです。とにかくこの1枚を聞け!

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