Ishibashi Mail Magazine

Ishibashi Mail Magazine Vol.82

この一枚を聞け! [PHIL COLLINS / FACE VALUE]



 今回のアルバムはイギリスのプログレバンド、ジェネシスのドラマーでもあったフィル・コリンズのファースト・ソロアルバム、「FACE VALUE」を紹介いたしましょう。

 フィル・コリンズがジェネシスに参加したのは3作目のアルバム「Nursery Cryme」からである。このアルバムからジェネシスはイギリスで人気を不動モノのしていくのである。この時点ではフィルは完全にドラマーであった。ヴォーカルは強烈に個性のあるピーター・ガブリエルが在籍しており、そのカラーがバンドの特性を作っていたといっても過言では無いだろう。

その、フィルに転機が訪れるのは1974年のことである。ヴォーカルのピーター・ガブリエルがアルバム「The Lamb Lies Down On Broadway」を発表後、脱退してしまう。この時点でジェネシスはヴォーカルを加入させるのではなく、コーラス等も行っていたフィルにヴォーカルをとらせたのである。76年に発売されたアルバム「A Trick Of The Tail」ではドラムとヴォーカルを全て担当している。しかし、ライブではやはり無理があり、この頃からライブのみドラマーにチェスター・トンプソンが担当するようになる。
 
 そしてこの頃からフィルはヴォーカルへとそのパートを変えていくのである。フィルの歌声は時にやさしく、時にアグレッシブにその多彩な才能はどんどん進化していくのである。80年前半になるとソロアルバムの作成がバンド内で活発になり、フィルも遂に作成に入っていく。81年にジェネシスのアルバム「Abacab」が発売されたと同じ頃、このアルバム「FACE VALUE」が発売となる。

 80年代に入った頃のジャネシス・サウンドはコテコテのプログレではなく、MTVにも受け入れられるくらいPOPのサウンドに進化していく。そのラインで作成されたこのアルバムは言うまでもなくイギリスではNO.1を獲得、アメリカでもベスト10に入り込むベストセラーとなった。また、このアルバムのバックメンバーにはジェネシスのライブ・ギターリストでもあるダリル・スチューマーを筆頭にフィル自身のバンド、ブランドXのキーボード、ピート・ロビンソンやアース・ウインド&ファイヤーのホーン・セクションが参加している。そして1曲目の”In The Air Tonight"”などは正に今後のフィルの音楽性を示す1曲になっていると思うのです。

 また、ゲスト・ギターリストとして参加しているのが御大エリック・クラプトンである。”If Leaving Me Is Easy”1曲の参加であるが、その存在感はたいした物である。この頃からフィルとの交流が深くなり、80年代中ごろになるとドラマーとしてクラプトンのツアー・メンバーになったりしている。実に豪華な組み合わせだ!

 この後、1996年ジェネシスを脱退するまでの間にベストセラー・ソロアルバムを数枚発売し、ジャネシスのアルバムとあわせると10枚以上のビックヒットアルバムを量産した。一方、フィルが抜けたジェネシスはその勢いを一気に無くし、98年に活動を停止してしまう。だが再結成ブームにのっとりジェネシスも2006年にフィル・コリンズ、トニー・バンクス、マイク・ラザフォードの黄金期メンバーにて再結成を果たす。ツアーも行い順風満帆に思えたのだが、2008年にはフィルが音楽活動引退を表明!

 そして現在は脊髄手術を行い、そのリハビリ生活を送っているらしい。引退を表明したがそこはミュージシャン。オジー・オズボーンも引退を表明したが翌年ツアーにまわっていた。(笑)フィルもまたシーンに戻ってくる事を信じたい。とにかくこの1枚を聞け!

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