Ishibashi Mail Magazine

Ishibashi Mail Magazine Vol.67

American Sound History [Martin 00-21 1954年製]



 今回ご紹介するのは00(ダブル・オー)サイズの00-21モデルで、古くは1800年代後半より存在しておりマーチンスモールボディの中でも人気のあるモデルです。

 00は000モデルより少し小さめなボディーで、12フレットモデルは000ではボディーの大きさが15インチに対して00は14と1/3インチサイズになります。

 000は”オーディトリアム(公会堂の意味)”とよばれ、00は”グランドコンサート”と呼ばれています。00の代表モデルは00-18と00-21が有名ですが、18はマホガニー材を使用した甘く高域が美しい軽やかな音のイメージです。また、ハカランダ材が使用された21はハカランダ材特有の立ち上がりがよく、コシのある音でどちらもマーチンサウンドの魅力が詰まっており大変人気があります。

 今回の1954年製00-21のコンディションはまずTOPの塗装はオリジナルでPGもオリジナルのべっ甲柄が付いており、マーチンクラックも無く、TOPの膨らみ等の変形も殆ど見受けられずかなり良い状態が保たれています。ボディー1弦側サイド(レスポールなどのJACKが有るあたりです。)に破損した跡が有り、6cm×1.5cm程のサイズで新たに木が埋め込まれています。木目なども似たような木目を選んで修理を行なっており、比較的きれいに修理されている印象です。(その影響でサイド部は1/4周ほど、塗装を研磨し吹き直しております。)

 バックはクラックも無く、大変綺麗な状態でSIDE&BACKのハカランダは50年代ならではの目の詰んだ綺麗な柾目のハカランダが使われております。ヘッドストックの表面にもハカランダが使用され顔つきがとても艶やかで雰囲気があります。ネック裏は全体に弾き込んだ事で塗装が無くなってしまったようで、全体的に薄くオーバーラッカーされています。

 ペグ本体はオリジナルの物が付いていますが、ツマミが収縮して劣化したのでしょう、1弦のみオリジナルのツマミで、その他は同じタイプの物に交換されています。

 ナット、サドル、フレットは交換されておりフレットは交換したばかりのようで、殆ど減りは見受けられません。弦高は12フレット上で6弦側2.6mm、1弦側1.9mmと大変弾き易くセットアップされています。ただこの弦高にセットアップする為に、ブリッジのサドル下が削られています。通常ブリッジを削る場合、全体的に薄く削るのが一般的ですが、これはブリッジのお尻の方から前に向けて斜めに削っています。その為、ブリッジを真横から見るとブリッジのTOP面がネック側に向かって斜めに傾いているように見えます。それでもペタペタという事は有りませんので、ぱっと見の違和感は無いと思います。

 その他、細かい事ですが、弦穴が長年の使用で少し広がってきており、普通に弦を張ると、弦の巻き返し部分がサドルに乗っかってしまいます。その為、現在はボールエンド部にもう一つボールエンドを噛ませて弦を張っております。

 サウンドですが、50年代ハカランダの抜けの良さとスロッテッドヘッド、12フレットジョイントならではの倍音豊かなメロウなサウンドが融合され、この時代のこのモデルでしか味わえない素晴らしいサウンドです。やはり50年代のギターは良いですね。デューク今回もグッときました。オ〜アメリカン!

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<デューク工藤:プロフィール>
プロフェッサー岸本に師事し、渋谷店での6年間に数々のリジェンダリーを師匠と共に経験。ただいま池袋店に勤務。
彼自身のフェイバリットミュージックは60年代から70年代のロック、ブルースとサウンド面でもヴィンテージサウンドに精通。宝物探しのお手伝いを親切丁寧にいたしますので心より御来店お待ちしております。