Ishibashi Mail Magazine

Ishibashi Mail Magazine Vol.63

American Sound History [Fender Stratocaster Natural 1980年製]



今回はストラトキャスター1980年製をご紹介いたします。1979年から1981年の間はストラトキャスターの生産本数が最も多い時期と言われており、各パーツが増産された結果ストック数が管理できず、ネックのストック数がボディより多いなどのトラブルも発生したとも言われております。この時期のストラトキャスターはどのような作りであったかを各パーツごとに見ていきたいと思います。

 まずはヘッドは1965年より続いているラージヘッドでCBS時代の象徴とも言えるデザインですがヘッドロゴは時代により変更していきます。1976年にはそれまでネックプレート裏に刻印されていたシリアルナンバーはヘッドロゴ下に移り、”ヘッドシリアル”と呼ばれる時代に入ります。徐々に各パーツボディ、ピックガードにもシリアル管理されるようになり、1978年頃になるとネックとアッセンブリーのシリアルが同じ物も多くなり出します。ピックアップのボビン裏にもデータが入っており、最後の2桁が年式をあらわすことが多いですが消えかかっていたり、スタンプされていないものも存在します。
 
 1976年頃からマイナーチェンジが多くなり、前年にはピックガードが白パーツから黒パーツ仕様に変更になりますが、ピックアップカバー、ノブ、トレモロカバーなどは徐々に黒パーツに変更され、すべてのパーツが黒になりだすのは1977年に入ってからでした。おそらくこれは白のパーツが残っていて使い切りたかったのでしょう。こうしたことはフェンダー社ではよくあることで、テレキャスターが発売された当時も”ノーキャスター”のロゴシールがまだあまっていることで、テレキャスターの名前が正式に決まっていてもしばらく”ノーキャスター”ロゴシールが使用されていたそうです。
 
 1976年にペグはドイツ製のシャーラー製”Fキー”に変更されました。サイズの規格も変わりヘッドのペグ穴も少し大きくなりました。1977年にはそれまでピックアップセレクターは3ウェイスイッチでしたが、5ウェイスイッチになりこれでハーフトーンがセレクトできるようになりました。意外と5ウェイスイッチになるのは遅かったのですが、ハーフトーンのアイデアはミュージシャンの間では要望があり、リペアーマンに頼み5ウェイ仕様にしてもらったりと工夫して回路変更していたそうです。

 1978年にはコントロール部のアースのとり方をボリューム、トーンのポットケースに黒い線で連結してハンダされるようになり各ポットにアースが導かれるようになりました。それまではピックガードに貼ってあるアルミシートにポットが6角レンチで固定されることによりアースをとっていましたが、これだと6角レンチが緩みしっかり固定されていないと音が出ないので、不良が起こりやすく、アース線をハンダする音により音でずのトラブルが減るようになりました。

 1979年には更にはアッセンブリーに改善策が取られます。今ではノイズ対策として一般的な”導電塗料”をキャビティー内に塗り、シールディング加工がされるようになりました。よりハイゲインなサウンドが求められれるようになり、他メーカーでもシールディング加工方法の開発が進んでいました。ギブソン社でも裏のパネルを外すとコントロール部分を覆うようにシールディングボックスを被すなどしていました。

 今回の1980年製もこれらの特徴が入っており時代感が味わえる1本となっております。楽器を見るとその時代に必要とされていたサウンド、用途などが反映されていて非常に興味深いことが出てきます。フェンダーギターはミュージシャンの意見と技術者の開発能力により進化してきたブランドで、今後もユーザーとのコミュニケーションによりその時代ごとのサウンドをクリエイトしていくことでしょう。オ〜アメリカンッ!

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<デューク工藤:プロフィール>
プロフェッサー岸本に師事し、渋谷店での6年間に数々のリジェンダリーを師匠と共に経験。ただいま池袋店に勤務。
彼自身のフェイバリットミュージックは60年代から70年代のロック、ブルースとサウンド面でもヴィンテージサウンドに精通。宝物探しのお手伝いを親切丁寧にいたしますので心より御来店お待ちしております。