Ishibashi Mail Magazine

Ishibashi Mail Magazine Vol.57

この一枚を聞け! [US / PETER GABRIEL]



 今回のアルバムは元ジェネシスのヴォーカリストでもあったピーター・ガブリエルの92年に発表したアルバム「US」をご紹介しよう。

 ピーター・ガブリエルを最も有名にしたのは86年に発売されたアルバム「SO」である。MTV世代の真っ只中、サウンド面でも映像の部分でも最もハイセンスな音楽として受け入れられ、元ジェネシスという名目も打ち消す作品になったのは言うまでもない。このアルバムが発売される前も有名ではあったが、やはり独特の楽曲からアメリカではあまり受け入れられなかったのは事実だ。しかしこのアルバムは全米でも最高第2位まで駆け上がり、瞬く間にトップスターとなったのだ。

 その反面、昔からのガブリエル・ファンにとっては納得がいかない部分もたくさんあった。楽曲はよりキャッチャーでポップになったし、この時代に流行っていたデュエット曲も含まれている。その昔、逆モヒカンをやったり、猿のコスチュームや全身イボイボのタイツでステージで立っていた者が、いきなりスタイリッシュに変身し、ダンスを踊っている姿に唖然としたのだ。

 しかし、その思いもあまりにも完成された音楽に圧倒され、再びファンは彼の元に戻ってきた。そしてその6年後に発売されたのがこの「US」である。志向は変わらずクオリティーを更に上げた楽曲に当然のことながら全英、全米共にTOP3にまで上りつめたアルバムである。アルバムに参加しているアーティストもほぼ「SO」と同じであるが、ゲスト参加でZEPPのジョンジーがベースを弾いていたり、ヴォーカルでシンニード・オコナーなどが参加しているところも面白い。アルバム発売時期におこなわれたツアー「シークレット・ワールド・ツアー」は映像化もされているコチラも是非チェックして欲しい。

 そしてこのアルバムは米英盤は10曲収録なのだが、日本盤のみ11曲収録となっている。これは日本のレコード会社がボーナス・トラックとして収録したのだが、アルバム・コンセプトから逸脱する事でアーティスト側から物言いがつき、発売後すぐに回収騒ぎとなっている。追加された曲はインスト曲であまり大した曲ではないが、ファンは戻す訳がない。中古市場でしか入手できないが手に入れる人はコチラもレアーかもしれません。

 ガブリエルは以前から人権問題を歌にしたりと社会的活動も行っていたが、このアルバムあたりから活動は活発化していく。「SO」発売の2年後の88年には人権擁護を訴え、ブルース・スプリングスティーンやスティングと共にツアーも行っているほどで、音楽がいろいろなモノを動かす時代の開拓者的存在でもあるのではないか。最近ではU2のボノあたりがよくいろいろな政治的な部分に顔を出している。まさに音楽に国境はなく、All You Need Is Love なのだ。今回は少しカッコつけすぎました。(笑)とにかくこの1枚を聞け!