Ishibashi Mail Magazine

Ishibashi Mail Magazine Vol.47

映像の中の楽器たち [Chapter:37 POV / PETER GABRIEL]


 今回の映像は元ジェネシスの奇才ヴォーカリスト、ピーター・ガブリエルの87年10月にアテネで行われたライブ映像を紹介しよう。この映像はアメリカの有名な映画監督、マーティン・スコセッシをプロデューサーにむかえていることでも有名になった。スコセッシはザ・バンドのラストライブ映像「ラスト・ワルツ」も手がけている。

 ガブリエルは86年に自身の音楽活動のキーポイントともなる作品「SO」をリリースする。ジェネシス脱退後、アルバムは数枚出しているが玄人受けするアルバムが殆どであったため、見た目等から日本でもアンダーグラウンドな存在であった。そのイメージを全て変えるようなアルバムがこの「SO」である。80年中期は正にMTV全盛の時代で、そのMTVで絶賛されはじめた途端に一躍時の人となってしまったのだ。

 「SO」の中で一番最初に全米No.1になったのが”Sledgehammer"という曲で、このPVは87年のMTV年間最優秀ビデオにも選ばれた。ガブリエルはまさにシーンを独占していたといっても過言ではない。この映像はそのもっとも油ののった時代のガブリエルのライブなのである。映像を見ると80年代が手に取るように解る。まず、メンバーのほぼ全員がヘッドセットマイクであること。これはこの時代歌いながら踊ることが主流でったことから最も動きやすくするため。そして衣装の殆どに肩パットが入っているのも80年代の象徴ではないだろうか(笑)

 そして楽器を見てもそれが解る。ギターのデビッド・ローズはスタインバーガーを使用している。そしてベースのトニー・レビンもチャップマン・スティックを使用している。日本にもこの頃流通し始めたが、スティックを最も有名にした人はこの人ではないだろうか。このスティックを手にダンサブルにベースを弾く姿は、今までに見たことのないプレイヤーであった。また、もう1本ベースを使用しているがこれがミュージックマンのスティング・レイである。今ほど安い価格ではなく物凄い高価なベースであった記憶がある。

 この映像のあとにもいくつかガブリエルはライブをリリースしている。しかし、体系はどんどんとオッサン化しており、しかも髪の毛もどんどん薄くなっている。70年代の最初の頃、逆モヒカンをして歌っていた頃の面影は今はもうありませ〜ん。しかし、そのストイックなステージングや音の作り方、そしてライティング等全てのステージ作りが完璧なのである。やはり奇才は今でも変わっていない。

 初めてガブリエルを見たのが86年の冬。神宮球場で行われたフェスの参加者の一人として来日した。ちょうど「SO」が発売されて間もない頃だ。共演者はジャクソン・ブラウンや日本からは白井貴子&クレージーボーイズ等が参加していた。とにかく寒い日だったのを覚えているが、あの時大合唱した”BIKO”は今でも忘れない。ライブ活動など今はしていないかもしれないが、また日本で彼を見たいゼ!

[POV / PETER GABRIEL]

1.This Is The Picture
2.San Jacinto
3.Shock The Monkey
4.Games Without Frontiers
5.No Self Control
6.Mercy Street
7.Sledgehammer
8.Solsbury Hill
9.Lay Your Hands
10.Don't Give Up
11.In Your Eyes
12.Biko

Peter Gabriel (Vo)
Manu Katche (Dr)
Tony Levin (Ba)
David Rhodes (Gt)
David Sancious (Key)

Special Guest:Yoissou N'Dour,Les Super,Etoiles de Dakar
70年前期の逆モヒカンのガブリエル
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ガブリエル参加のフェス。初来日チケット
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この映像もゴキゲンです!すこしオデコが・・・
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トニー・レヴィンの新譜。まさにスティックマン<br />
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