AKAI EWI SERIES

ウィンド・シンセサイザーの代名詞と言えるAKAIのEWIシリーズ。管楽器の奏法で演奏できるため、吹奏楽ユーザーにも定評の楽器です。また、通常の管楽器よりも音が出しやすいので、これから始める方にも人気のウィンド・シンセサイザーです。そんなEWIシリーズの現行機種『EWI5000』と『EWI4000sw』を機能面やサウンドサンプルで比較。両機種の持ち味をご紹介すると共に、EWIの歴史についても詳しくご案内致します。


待望のスピーカー内蔵ウインド・シンセサイザー!ご購入・詳細はこちらの商品ページから>>

VIDEO
AKAI EWIとRoland Aerophoneを宮崎隆睦さんが徹底チェック!

EWI4000swとEWI5000の違い

EWI4000sw

 アナログ音源をソフトで再現した「アナログ・モデリング音源」を搭載。1970年代にウィンドシンセが誕生して以来脈々と受け継がれてきた“古式ゆかしい”ウィンドシンセ音色を出すことができます。音程の切り替わりも連続性のある「アナログ」であるが故に、運指した際も非常に自然で滑らかな音運びとなります。「ウィンドシンセと言ったらこの音」と言うファンも多く存在します。

EWI4000swは息によって様々なパラメータを動かす事ができ、また前述したアナログ音源の特性から「プレイヤーの吹き方によって音色の表情が変わる」ため個性を強く出す事が可能です。 基本波形は鋸歯状波、矩形波、三角波の単純な三つの波形しかありませんが、多数のパラメータを設定する事で波形を変化させより複雑な、それもウィンドシンセに特化した音を出す事ができます。まして贅沢にも「それ専用のフィルターが付いたホワイトノイズ」などという、明らかに「ブレスノイズのために付けました」的な機能まであり、至れり尽くせりの状態です。
 音の元である「波形」を自前で作る事ができるという事から非常に太く、バックに埋もれない音というのも特徴のひとつです。

アナログ(・モデリング)音源はシンセサイザーの基本でもあり、多くのTipsやノウハウがあるため音づくりを楽んだり学んだりするのにも良いでしょう。
本物のアナログ音源では電圧のやり取りによって様々なコントロールを行いますが、ステージの照明やPAシステム等の電源供給元が同じだったりすると現場の電圧に左右されてピッチが下がったり、温度・湿度に気を使う等デメリットもあります。EWI4000swはアナログ・モデリング音源のためそういった心配事もなく、安心してプレイできます。

取扱店の在庫を見る>>

EWI5000

 既存の楽器を録音(サンプリング)・再生させる事で、幅の広い音を出せるPCM音源を搭載。滑らかさや個性の点ではアナログには劣るものの、生楽器の再現やアナログ音源ではとうてい作り出せないような個性豊かな音を出す事が可能です。特に生楽器系は「マルチサンプリング」と言う、音のポイントになる部分(例えばサックスで言えば管の長さがオクターブキーによって大きく切り替わる真ん中のレや、息を吐くと吸うで音色が違うハーモニカ、音の強弱でブレスノイズの乗り方が違うフルートなど)で複数の録音をして再生を切り分ける事で、よりリアルで生々しい音を再現できます。またウィンドシンセであるEWIは息で音色をコントロールできるため、鍵盤弾きやマウスによる打ち込みでは到底かなわないような人間臭い演奏も可能。

 シンセ系ではオーソドックスな波形もありますが、「なんでこれ採用した?」と思うような非常に特殊な波形も色々入っており、楽器から挑戦状を叩き付けられているかのような音を攻略する楽しみも大きいのです。更にはOCTスイッチにてオクターブ違いのサックスやトランペット音色で簡易ホーンセクションを作ったり、生楽器の音を使いながらも「ウィンドシンセ吹き」をする事で“新しい音”を楽しむ事も。リップ、ブレス、ベンド、グライド等の各種操作子をUSB信号でMIDI信号として出力可能なためPCを使った打ち込み用途にも便利。またワイヤレスレシーバーが同梱されているのでケーブルレス環境を簡単に構築できます。

取扱店の在庫を見る>>

SOUND SAMPLE

History of EWI

EWI1000(木管楽器型コントローラ)/ EVI1000(金管楽器型コントローラ)/ EWV2000(アナログ音源)

AKAI EWIの歴史はここから始まりました。 木管楽器型のEWI1000、金管楽器型のEVI1000、ふたつの専用音源となるEWV2000が同時発売されたのです。

EWIたちの歴史を語るにはまず先祖となる「Steinerphone」「Steiner EVI」という楽器を説明しなければなりません。 ナイル・スタイナーという電気的技術を持つトランペット奏者が「シンセサイザーを吹く事が出来る楽器」として考案したのが始まりで、それが金管楽器型ウィンドシンセの「Steiner EVI」でした。EVIはその後スタイナー氏のハンドメイドにより作られ当時のフュージョン系ミュージシャンたちに受け入れられます。更にそれを見た木管楽器奏者が「俺たちにも作ってくれ」と言う事になり、木管楽器型の「Steinerphone(またはSteiner EWI)」が誕生する事となります。 EVIは何度かメーカーを渡り歩きながら作られた事もありましたが、基本的にはふたつともハンドメイドであり、また「Steinerphone」はマイケル・ブレッカーが使用し無限の可能性を提示した事もあって注文が殺到。いよいよ捌き切れなくなったスタイナーから当時サンプラーで一時代を築いていたAKAIに対し「そっちで作ってくれない?」とオファーがあって誕生した経緯を持ちます。 世はMIDI全盛ではありましたが、ウィンドシンセの命綱であるブレス(息)という入力に対しては役不足であるため、AKAIではあくまでアナログの電圧コントロールを固辞。利便性や当時流行であった“デジタル”を捨ててでも生々しい表情を付けられる「ブレス(電圧)」を取るという意地を見せたのです(結果これが30年にも渡るシリーズの一因に)。

まず設計で悩ましかったのが「Steinerphone」等が採用していた「息の抜けないブレスセンサー」でした。通常管楽器と言えば当然ながら息は抜けるようになっているわけで、既存のウィンドシンセ達も全て息は抜けるように作られていました。しかしながら、新しい楽器である事や息が抜けない事によるメリット(息を吹き込み舌で穴を押さえると延々ロングトーンが出来たり、息を口の横から逃がす事で息の抵抗量を自分で調整出来る)がある事などから「Steinerphone」を踏襲する方向で作る事に。 またリップセンサーはEWIはビブラートセンサーなのに対し、EVIは右手親指でビブラートをするためのレバー(トランペットの奏法でもある“シェイク”をイメージしたもの)を用意し、リップではグライドタイムの変化させる等の楽器形態特有の差別化も行いました。 専用音源であるEWV2000は1VCO-1VCF-1VCAのフルアナログシンセが2系統あり、別系統ではあるものの二つのオシレーターをシンクさせる事も可能。特筆すべく事例としては、波形が鋸歯状波であろうと三角波であろうと必ず一緒に矩形波が混ざって出力されるという点です。この事から音源自体が非常に透明感を持ち、他には無い独特の個性を持つ事となります。

なお、外部音源のMIDI制御については完全に捨て去ったわけでは無く、外部音源のコントロールを簡単に、そして滑らかに息で行えるよう、EXT.INという手法が取られる事になりました。 これは外部音源の音階・音程とNote信号のオンオフ(鍵盤で言う押した・離した)のみMIDIで行い、発音された音をその音源のラインアウトからEWVのオシレーターに引き込み、EWVのフィルターとアンプをEWIや EVIで電圧駆動させるという物。 これによりブレス信号の受信可否により外部音源の選択肢が狭まる事も無く、また煩雑な設定をする事無くブレスコントロールが可能になりました。EXT.INはソフトウェアの進化によりMIDIによるブレスコントロールが現実的に可能となったEWI4000sが登場するまで採用されていました。

音色の外部保存は懐かしのカセットテープ方式(!)。ピーギョロギョロとノスタルジックな音で保存・取り込みが行われるが、MIDIダンプ等と違い“録音器機”はいつの時代でもあるわけで、今でもMP3等代用手段はありデータの賞味期限は半永久的かも知れません。 なお、豆知識で「EWI」は現在「Electric Wind Instrument」の略とされているが、最初は「EVI」が「Electric Valb Instrument」の略である事から、木管楽器を意識して「Electric Woodwind Instrument」であったのです。

EWI3000(コントローラ)/ EWI3000m(アナログ音源)

コントローラーである3000は1000の時に不評だった「息の抜けない構造」を排気出来るように改良され、グライドプレートは右手親指のアースプレートを縦に分割されるような位置からオクターブローラーの奥に移設、ブレスセンサーもダイヤフラム方式からセンサー式になってよりダイナミクスの取れる設計となりました。 マウスピースもより軟質で幅広なものに代わり、リップセンサーの設計にもメスが入る事でメンテナンスもしやすいようになりました。これらの改良により現在のEWIまで続く優れた基本設計が二代目にして完成した事となります。 音源も小型化(平置きタイプ)され可搬性が向上。サイズは小さくなったものの、音源の構成は2VCO-1VCF-1VCAのシンセが2系統搭載とVCOが各ソースでひとつずつ増え、更に幅広い音色を作りだす事が出来るようになりました。音の傾向は非常に明るく、また同系統内の2つのVCOを息によってクロスフェードさせる事でより複雑な音色を作ったり、合計4VCOをユニゾンさせブ厚いリードシンセを作るなども可能に。

ちなみにEWIの音色の代名詞とも言われる“JUDD”が無い唯一のアナログ系EWIでもあります。巷間で良く噂される「ピッチEGが無いためJUDDを作れない」というのは誤りで、 VCO専用のEGが無いだけで、VCFのカットオフ周波数の動きをVCOに反映させられるため実は簡単に作る事が出来る事は記しておかねばなりません。 また音源側にMIDI INが搭載される事でEWI以外で外部音源として使用する事ができるようになりました。 惜しくも音源の小型化を優先したせいで回路と電源が近くなったためノイズが乗りやすいという欠点を持つため、一部に専用のツアーケースに電源を外に出した“プロ仕様カスタム機”がいくつか存在しました。

また、オシレーター・シンクも搭載されてはいるものの、シンク変調をかける側であるVCO-Bをブレスで音程変化出来ないため強烈なシンク音色が作れないといった弱点も。 なお、X335iというEWIのマウスピースの機能だけを抜き出してEWIの専用コネクタへ接続して使うヘッドセット型のブレスコントローラーが同時発売されたり、EWIに取り付けるメカニカルキーがオプションで用意される等様々な試みが成された事も特筆すべき点です。

EWI3020(コントローラ)/ EWI3020m(アナログ音源)/ EWI3030m(PCM音源)

コントローラーである3020は先代の3000と色違いなだけで形こそ同一だが、実は内部の回路が見直されており、レスポンスが高速で敏感なブレスセンサーとなっています。マウスピースも硬くなり耐久性が向上。細かいところではケーブルクラッチが横からケーブルを入れる方式から、真ん中に切れ目があり上から押し込んで挟むような物になり、ケーブルを抜き差しした際に起こり易かった断線が減りました。

音源である3020mはプロからの強い要望だった「ラックマウント式」「可搬性を犠牲にしてもノイズや音痩せの無い筐体」が採用。音源構成は2VCO-1VCF-1VCAが1系統と物理的な数は少なくなったが、回路の徹底的な見直しと荒々しくネバりのあるVCOが採用された事から音の厚みは3000mより太く埋もれない出音に。非常にキレのあるフィルターが搭載された事で息による音色変化も幅広く取れるようになり、また各種パラメータを自由に割り振る事が出来る「アサイナブル・モジュレーション」を搭載した事で格段に音作りがし易くなりました。 3030mは初のウィンドシンセ用PCM音源。膨大なサンプラー資産とEWIで得たノウハウを投入し、デジタルとは思えないようなフィーリングで幅広い音色を吹く事が可能になりました。 更に何台ものEWI音源同士を専用のアナログケーブルで数珠つなぎする事で滑らかに同期させられるインターフェイスの導入等、全く隙の無い仕様でありました。

しかしながらそれらを考慮しても音源のサイズはあまりにも大き過ぎたようで、持ち運びやライブの転回で苦労したり、持ち運びは結局3000mとする者や購入自体を躊躇する者など小型化を望む声が日増しに多くなっていきました。

EWI4000s

満を辞して開発されたオールインワン機種。音源・エフェクトを内蔵し「これ一本あれば他の荷物はシールドケーブルだけ」という、旧来のユーザからしてみれば正に夢のような楽器の誕生でした。 全てを内蔵したため管体はやや大型化したものの、可搬性の問題から購入を躊躇していた潜在的ユーザ達を掘り起こし、フュージョン系のセッションやライブ等でも見かけるようになりました。

また専用ケーブルを廃した事により断線の恐怖に怯えたり、ライブの際は予備ケーブルを持ち運んだり、定期的に起こる1本1万円近い出費が無くなる等が解消されたのもポイント 音源はAKAI拘りのアナログ・モデリング。ソフトウェアではあるがハードウェアアナログ音源と比べても遜色の無いブ厚くヌケてくる音にチューニングされており、パラメータも「徹頭徹尾ブレスであれこれしてやろう」という気概を感じることができます。 -6dbのマルチモードフィルターが直列で2基搭載されている等の新機軸もあり、個性的な音から古式ゆかしいウィンドシンセサウンドまで出す事ができます。

ちなみに4000sのsは「サウンド」のs。 インターフェイスとしてMIDI IN/OUTが付いており、音色の編集はパソコンに繋げて行うが、システムのアップデートなど旧来の機種ではユーザではどうにもならなかった部分も解決されました。 ソフトウェアの恩恵から運指も選べるようになり、中には懐かしのEVI運指なども。 開発当初からオールインワンを目指しており、プロトタイプの中にはPCM搭載機などもありました。 後継(現行)の4000swはカラーバリエーションとプリセット音色が増えたものです。

AKAI EWI取扱店舗