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●アレンビック・ギター&ベース


●アレンビックの振動系 ●アレンビックの電気系


●アレンビック・ギター&ベース
電気ギター、ベースをさらに発展させるきっかけと なったとされている手工製品である。 アレンピック社の製品は首尾一貫した思想により設計されていて、 ギター本体からピックアップ、 さらにはアンプまで思想がつらぬかれている。
まず外観で目につくのは、素材の美しさである。 塗装は当然ナチュラル仕上げのみで、 木材の木目や色で変化を出している。 ボディ、ヘッドなど全体に左右対称の形状を持ち、 スケール長はモデルにより各種ある。 また手工のため、特注モデルも多数ある。 ブランド・マークは純銀製、 チューニング・マシンはシャーラー製、 その他金属製パーツはほとんどブラスのものをしようしている。 ネックは5ピース・ラミネートで通しネック・スタイルである。 アジャスト・ロッドはリッケンバッカー製ベースのような U字タイプが用いられている。 また、ブリッジ下にはサスティン・ウェイトを持っている。
ピックアップ、コントロール系には、 ローパス・フィルター・タイプのイコライザーや、 ハムをキャンセルするための特別な ピックアップなどが盛り込まれている。 このアクティブ型回路にはバッテリーあるいは、 外部から電源を供給するようになっている。



○アレンビックの振動系
ネックと一体に作られたヘッド部分は、 メイプルを主体の5ピース構造で、 上部表面に3枚、裏側に5枚の薄い板がラミネートされ、 ヘッド部分を補強し、共振、デッド・ポイントをなくしている。 上の図↑はアレンビックのギター、ベースの振動系である。 5ピースの通しネックで振動系はしっかりと支えられている。 このネック上にサスティン・ウェイトを持ったブリッジが付き、 ローズ板とブラスの板でできたテールピースがついている。 このサスティン・ウェイトのため非常に 長いサスティン効果が得られる。 この通しネックの両側に↓下の図のように、 空洞を持ったボディが付いている。 このボディの空洞はセミ・アコースティック・タイプのような 胴を共鳴させる方式ではなく、 重量を軽減するだけのものである。 つまり、アレンピック社の振動系の考え方は、 できるだけ理論通りに木部、つまりヘッド、ネック、 ボディなどを振動せず、また振動しても共振を できるだけ減らして弦を振動させ、 電気系で音色に変化を付けてゆこうとするものである。


○レスポールモデル電気系
ボディ・センターの通しネック上にピックアップ 2個ががっちりと固定されている。 スポンジを介しているとはいえ、 4本ビスで上方と下方よりピックアップを完全に固定しており、 フェンダー、ギブソンが多少バネで フローティングしているのとは対象的である。 このピックアップはバータイプの マグネットとコイルをシールドし、 プラスチックでモールドしたシングル・コイル・タイプである。 また2個のピックアップの中間には、 ハムのみを拾うピックアップが埋め込まれている。 このピックアップは弦振動を拾わないように磁石はなく、 鉄芯にコイルを巻いただけのものである。
これらのピックアップ信号はボディ下部のPCボードに接続されている。 下の図↓は回路図である。
ピックアップ出力はまずF.E.T.によるソース・フォワー回路により、 ロー・インピーダンスに変換され、 OPアンプによる増幅回路に入る。 同じようにハム・キャンセル用のピックアップ出力も増幅された後、 ここでOPアンプの逆相で加算されハムをキャンセルする。 この量は100オームの半固定抵抗で調節でき、 一般のハンバッキング・ピックアップに比べ、 ノイズをより完全に打ち消すことができる。 こうしてハムを打ち消し増幅された信号は、 次のトーン・コントロール回路に入る。 この回路はローパス・フィルターと 呼ばれるもので↓下の様な特性を示す。
さらにこのローパス・フィルターの肩特性にピークをもたせ、 そのピークのQ値が2段に変化するように できている(←左の図)。
トーン・コントロールを出した信号はボリュームを通り、 ピックアップ・セレクター・スイッチを経て、 ステレオ・アウトプットへと接続される。 以上のい回路がピックアップ2個分用意されているわけであるが、 この回路に使用されているOPアンプは ハリス・セミコンダクターHA-911で、 ローノイス、低消費電流型である。 しかし、このOPアンプを5個使用しているため、 消費電流は多くなってしまう。 これを解決するため、XLRタイプ・5ピンのコネクターを使い 2個のピックアップ信号と同時に±9Vの電源を外部から 供給するパワー・サプライが用意されている。 右の図がその内部の回路図である。 この外部電源を用い、LED製のサイド・ポジション・マークを イルミネートしているモデルでもある。



このようにアレンビック社のピックアップ・コントロールは、 できるだけくせのないよう弦振動をピックアップし、 ギター特有のくせをイコライザーで 創り出そうという考え方が基になっている。 またそれ以外にも徹底したノイズ対策を取り入れるなど、 技術の高さがうかがえる。 この他、アレンビック特注品の中にも 数多くのアイディアをみる事ができる。 たとえば木材に似た特性を持ち、 強度は木よりも強いという炭素繊維製のネックや 高域までのロング・サスティンを可能にしたステンレス製 フィンガーボードを持つフレットレス・ベース、 ダブル(8)弦のベースなど、興味深いものがある。


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