懐かしのキーボード達
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ROLAND SH-1 1978年、SH-1000,SH-2000,SH-3,SH-5と続いたSH品番に、小型低価格のシン セSH-1(\99,000) が発売されます。上記の機種が開発された時期と比較すると、自社パーツ、 他社パーツの開発は大きく前進し、開発ノウハウ、方法も飛躍的に変化したものと思われます。 前年の1977年にはヤマハからCSシリーズが発売されており、 またSH-1の翌年である1979年にはコルグから MSシリーズが発売となる、そんな時期でした。時代はシンセサイザー&多重 録音ブームの兆しが見え始め、録音機器=音響メーカーと云う図式から、 電機メーカーである日立のからLo-Dブランドでモノフォニックシンセが発売 されたり、ラジオ・無線関係のファン向けにシンセサイザー基板が発売され たりと、様々なシーンでシンセサイザーが話題となり、一部のマニア的楽器 からメジャー楽器へと変化して行ったのもこの頃でした。

さて前述のSH-1ですが、その特徴として、それ以前のシンセで使われていた スライド式のコントローラが多く使われている点が上げられます。ヤマハや コルグは殆どダイヤル式のコントローラでしたから、これはローランドの特 徴と言えるでしょう。因みにダイヤル式コントローラはたったの6つしか付 いていませんでした。その後のこのシリーズではダイヤルのツマミ部分を 取って軸だけにしてしまったりと、更にダイヤルツマミを減らしています。 コスト削減に一役買ったのかも知れません。この操作パネルに関しては賛否が 分かれるところでして、ムーグ等の流れからダイヤル式が好きな人も居れば、 アープ派(と言うわけではないが)はスライド式を支持するなど様々でした。 隙間部分にホコリが入り、接触不良の原因になるので嫌だと言う方も居ました し、逆に接点復活材などを注入できるのでこちらの方が良いという人も居まし た。視覚的に音作りがし易いという意見もありました。確かにエンベロープな どは、パネルに記載されたエンベロープの形状とスライドツマミの位置関係が 似ている様でもありましたからね。ライブでの操作に於いても、近く複数のツ マミを片手で同時に動かせるのでグッドという声もありました。確かにカッ ト・オフとレゾナンスを同時に動かすとダイナミックな音色変化が得られます ので、ライブでは効果的であったかも知れません。ダイヤル式で同じ事をやろ うとすると、かなりのテクニックを要しますからね。SH-1は32鍵、1VCOでした が、サブ・オシレータ機能を備え、1オクターブから2オクターブ下の音をス イッチで切り換えて出せる様になっていました。VCFはカット・オフとレゾナ ンスというお馴染みのコントロールの他に、HPF(ハイ・パス・フィルタ)が 別に付いていました。ENVコントロールは通常のADSR方式とAR方式の二つの ENVジェネレータが装備されていました。CV/GATEのイン・アウト、外部音声 入力端子やトリガーのインプットが有りと、他のシステムとの接続も充分に 意識した設計となっており、低価格と言う事もありヒット商品となりました。

ROLAND SH-7 1978年、SH-3,SH-5シリーズのハイエンド機種として登場したのがSH-7(\239,000)でした。 この機種の一番のポイントは、2ノート(2和音)タイプであったことです。 2ノートタイプのシンセとしては、既に3年前の1975年にコルグから 800DVが発売されていましたので、 その点では遅ればせながらと言えるかも知れません。 素晴らしい機種であったにも関わらず、あまり内容を覚えていないのはそのせいでしょうか。 また、この時期になると\239,000という価格は、他シンセと比べて相対的に非常に高価に感じられました。 SH-1がかなり広い層まで人気だったのに比べると、(高価なので当然ですが)かなりのマニアの方か、 高度な演奏性を求める方に指示されていましたが、販売台数としては今ひとつだった様な... (ローランドさん、間違ってたらゴメンナサイ!)

ROLAND SH-09 SH-1の設計は同年発売されたSH-09(\79,000)、 へと引き継がれて行きます。SH-09は、SH-1の機能から最低限必要な機能だけを残して脂を削ぎ落とし、 更なる低価格を実現しています。サブ・オシレータは同様に装備されているものの、 ノイズ・オシレータはVCOの中に収められ矩形波や鋸歯状波と切り替えて使う様になっています。 ある面贅沢な機能であったSH-1のENV-2を無くし1ENVでまかなう様にしたりと、 低価格化を実現するための設計者の苦悩と工夫が感じられます。 つまみ類は更に減り横一列にきれいに配置され、CV/GATEやOUT PUT等のプラグ類も 上を向いていたものが背面を向くことにより、 幾らかボテッとしていたSH-1の形状が横長のすっきりしたデザインへと変わりました。

ROLAND SH-2 翌年の1979年に発売されたSH-2(\99,800) は上記2機種の設計を受け継ぎ、SH-09の上記機種として、更にSH-1の後継機として発売されました。 価格はSH-1に比べわずか\800高いだけ。何と言ってもVCOが2つ搭載され、更に従来の機種同様 サブ・オシレータを内蔵していたため、3VCO並の音質というのがうたい文句でした。 Moogの様な図太い音(?)を出すにはオシレータを増やし微妙にピッチをずらす的な考えや、 VCOが多い方が当然音づくりの可能性が広がるなどの考えがあった様に思います。 鍵盤数も上記2機種は32鍵であったのに対し、SH-2は37鍵と3オクターブをカバーし、 演奏性も若干向上していました。

ROLAND CSQ-100 1979年に発売された画期的製品に、デジタル・シーケンサーCSQ-100(\69,000)が ありました。それまでのシーケンサーはVol式の可変抵抗で音程を設定していたため、 音程ひとつに付きひとつのVolコントローラが必要で、 多くの音程を設定しようとしたら、SYSTEM700のシーケンサ・ユニットの様に コントローラツマミをずらりと並べる必要があったのです。 CSQ-100はCV/GATE情報をデジタルに置き換えることにより、最大168音という(その時代としては)途方もない数を メモリ出来たのです。SYSTEM700のシーケンサ・ユニットが36ステップ(36音)しか設定できなく、 しかもその価格が\280,000(後に\310,000に改訂)、SYSTEM100のシーケンサ・ユニットSEQUENCER104が 24ステップ(24音)で\75,000であったことを考えると、CSQ-100がどれだけ画期的だったかお分かり頂けるでしょうか。 しかもそのデザインはSH-2の筐体と統一化され、 並べてセッティングすると実にかっこいいと思ったものでした(カタログ画像参照)。 CSQ-100の背面パネルには、外部の鍵盤付きシンセから音程情報となるCVと音符情報となるGATE信号を入力する インプット端子と、再生するためのアウトプット端子が装備されており、 CV/GATEの企画が合う他のシンセでも簡単に使うことが可能でした。 (但し、ヤマハ、コルゴともその企画が異なっていた為に、接続が非常にやっかいでした。)

実はCSQ-100発売の前年、パックス・エレクトロニカという国内のメーカーからシグナスというシステム型の シンセが発売され、そのシリーズでデジタル・シーケンサが発売されていました。 プロトタイプの様なデザインでしたが、発想のあまりの斬新さ...と言うか、 まだ駆け出しであった私はデジタル式の操作性に慣れておらず、上手く扱えなかった事を覚えています。 シンセ本体も金属板のタッチ式キーボードでした。今から思えば、あまりにも先を行き過ぎていたのかも 知れません。メーカーとしての知名度もなく商業的には成功しませんでしたが、 今で言うベンチャー的な会社(?)で、ワクワクさせてくれる面白さがありました。 まだ、お茶の水にあるロックサイドの3Fでシンセを扱っていた時代です(懐かしー!)。

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