《懐かしのシンセサイザー/コルグ編 後編 》 | 《 前編はこちら 》
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前編では1979年に発売されたPS-3200までを紹介しましたが、この年、PSシリーズ
で開発された技術を生かしで、大ヒットとなるモノフォニック・シンセMSシリーズが
発売されます。格好の良いデザインと、ブラックパネル上に装備されたパッチング用
のシルバーの入出力ジャックが、PSシリーズやMoogのパッチシステムに憧れた少年達
(もちろん少年だけではありませんが)の心を捕らえたのは充分にうなずけます。
パッチング・シンセと言う意味では、1976年、既にローランドからシステム100、シス
テム700が出ていましたし、1978年には高い支持を受けたシステム100Mという機種が
発売されていました。しかしそれらの機種は、製品の特徴上、どちらかというとスタ
ジオ指向の方にファンが多かった様に思います。MSシリーズは軽くて持ち運びも便利、
パッチワーク&増設ユニットによる音作りの可能性、おまけに非常に安価であった事、
テクノ流行りであった当時の音楽事情などの要因が重なり、ヒット商品と成り得たの
ではないでしょうか。シリーズ入門機種として開発されたMS-10は\53,500という低価
格を実現していました。上位機種のMS-20(\98,000)も10万円を切る低価格ながら、
豊富なツマミ類と音作りの多彩さ、パッチ入出力ジャックの豊富さ、ギターやボーカ
ル等でコントロール可能な外部入力機能を搭載し、シリーズ中、最高の人気を誇って
いました。このシリーズが人気となった要因に、増設ユニットが同時発売されたこと
により、スタジオ指向の方にも支持を受けたことが上げられると思います。鍵盤無し
でMS-10並の音源ユニット+αであるMS-50(\85,000)、24ステップのアナログ・シ
ーケンサーSQ-10(64,000)、他社のシンセに接続するためCV、GATE信号を変換する
MS-02(28,000)、MS-20のエクスターナル・シグナル・プロセッサー部を別ユニッ
トにした様なMS-03(39,000)、電圧制御が可能なフットペダルMS-01(\7,500)、
LFOやS/Hの機能を装備し、ペダルによって出力電圧を変えられるMS-04(\20,000)
などの、ユニーク且つ斬新なオプション類が脇を固めていました。
人間の声をロボット・ボイスの様に変えてしまうボコーダー(最近また流行している
ようですが)のVC-10(\155,000)が発売されたのもこの年です。ボコーダーはまだ
一般的な楽器ではありませんでしたが、ハービー・ハンコック(だと思う)が自身の
アルバムで実に上手くカッコ良く使いこなしていたのを憶えています。(彼はMoogか
Oberheimか、海外のものを使っていたと思いましたが)
この年コルグは、別シリーズとしてプリセット型のシンセサイザーであるシグマ(Σ
:SIGMA \185,000)と、前号で紹介したPE-1000/2000の後継機と云えるラムダ(Λ
:LAMBDA \250,000)を発売しています。また翌年の1980年にはポリフォニックタイプ
のストリング・シンセサイザーデルタ(Δ:DELTA \168,000)、音色メモリー可能な
8ボイス・シンセである複合型キーボードのトライデント(\560,000)を発売していま
す。この頃は国内シンセサイザーが、モノフォニックからポリフォニックへと移って
いった時代とも云えます。
1981年はコルグにとって、本当の意味でポリフォニック時代への脱却と云える年では
なかったでしょうか。海外では既に老舗メーカーであるMoogから1975年にPolymoog、
ARPからも同年OMNI(1978年にQuadra)、Oberheimからは増設モジュールタイプの
8ボイスが1976年に(1979年にOB-Xが発売)されており、いち早くポリフォニック
時代を迎えていました。そして何と言っても1978年に米国SEQUENTIAL CIRCUITS社
から名器Prophet-5が、強烈なインパクトを持って登場したのです。その音、スペッ
ク、デザイン、どれをとってもその名の通り、これからのポリフォニック・シンセの
スタイルを予言させる名器でした。その様な状況の中で、コルグは6ボイス・シンセの
Polysixを\248,000という価格で発表します。32種類の音色をメモリー可能で、ポリフ
ォニック・シンセとしてはスタンダードになった61鍵のキーボードを持ったそのポリ・
シンセは、高価な海外製品に比べれば破格に、また自社のトライデントと比べても半額
以下の価格を実現し、6ボイスという発音数、全てのVCOをユニゾンにして重圧感のある
サウンドを可能にした機能は多くのプレイヤーからも支持を受けました。同時に発売さ
れたモノ・ポリ(Mono/Poly:MP-4:\149,800)も、4ボイス・シンセとしての使用が可能でし
たが、Moogの音を目指したという開発スタッフの努力もあり、むしろモノフォニック・
モード時の重圧なサウンドが受けていました。
Polysix発売の翌年、コルグはオシレーターをデジタル化したPoly-61(\179,000)を
発売します。音作りのためのツマミ類を排除し、パラメータを呼び出して音作りをする
という斬新な方式は、未来型のシンセを予兆させるものでしたが、反面操作性が悪く、
賛否両論と云ったところでした(しかし翌年YAMAHA DX-7の登場で、パラメータ方式
は一般的なものとなった)。翌年の1983年、49鍵ながら10万円を切る低価格で発売さ
れたPoly-800(\99,800)は、8ボイス、64メモリ、コルグ初のMIDI装備と云うこともあ
り結構人気の機種となりました。その後MIDIの普及もあり、Poly-800の音源部分だけの
ユニットEX-800(\79,800)やラックタイプのEX-8000(\149,000)などの発売へと
繋がって行きました。この頃各社デジタル化の並も激しく、コルグからはDW-6000
(\184,000)や8000(\199,000)、DS-8(\142,000)などが発売されましたが、
Poly-800が発売されたと同じ年の1983年、YAMAHAから発売されたDXシリーズの登場に
より、あらゆるシンセがFM音源の陰に隠れてしまったことは否めません。コルグの
シンセが再び脚光を浴びたのは1988年に発売された"Music Workstation" M1
(\248,000)からです。世の中はすっかりサンプリング音源が主流となっていました。
その後、T1(\500,000)、T2(350,000)、T3(\320,000)のシリーズへと続き、
現在またTRITONシリーズがヒットしております。
さて、後半かなり端折ってしまいましたが、懐かしのキーボード/コルグ編はこれで最後にしたいと思います。
発売年、価格等に誤りがありましたらご容赦下さい。
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