ギタリストのための「三線の勧め」
by 白井英一郎
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≪ 前書き ≫
沖縄音楽がすっかり日常レベルに入りこんできた感があります。僕の場合は喜納昌吉には
じまり一旦ライ・クーダーを経由して沖縄音楽に戻ってきたファン。ロックのフィルター
を通して沖縄音楽と接点を持ったわけです。最近のファンのようにいきなり島唄ではない
のですね。それで、ギターが弾けてしまうものだから、安易な気持ちで「沖縄音楽はレとラ
を抜けばいいんだよなあ」とそれっぽいことをやろうと試みると、実はこれが上手くいかな
い。結局「ハイサイおじさん」ならぬ「変なおじさん」どまりの音楽になってしまうのです。
反省しました。やっぱり「沖縄」体に染み込ませるには三線をかじるしかないのです。島唄
が大切なのです。
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ギター人間のためのなんちゃって三線入門?

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ところで、ロック、フォーク、ブルース、ジャズ、カントリーといった音楽の世界では、
自己流のギターは当たり前。教則本やビデオにお世話になりつつ、ライブ演奏やCDなど
を手本に弾けるようになった方は多いと思います。ギターを多少弾ける人間にとって、他
の撥弦楽器はさほど難しく感じないものです。三線もある意味ではまさにそうです。しか
し同時に三線独特の特徴があります。それからは逃げられません。そこで、「ギターは弾け
るし、今更先生について一から三線の基本を学ぶのは面倒…..」と言う方のためのヒントを
紹介していきたいと思います。これから書くことは伝統的な三線の演奏スタイルを否定す
るものでは一切ありません。教則本、教則ビデオも併用ください。基本的に教則本やビデ
オで紹介されないポイントのみ触れていきたいと思います。
それでは早速スタート!
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● 三線選びのポイント

「白井所有の琉球楽器またよしの蛇皮三線の胴」
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「蛇皮か? プラスチック皮か?」
ポイント1: 本蛇皮は割れて当たり前、消耗品と思え
ポイント2: プロこそ愛用するプラスチック皮
どんな楽器でも、まず最初は楽器選びで悩みます。三線もぴんからきりまであります。ギ
ターなどで多少楽器を見る目ができていると、材、塗装の質などが気になるものです。予
算との兼ね合いもあるでしょうが、長いおつきあいをするつもりなら、多少奮発しておい
た方がいいのはギターと一緒です。ところで三線には、胴に蛇皮を使用しているものと、
プラスチックの皮を貼ってあるもの、蛇皮の裏にプラスチックを貼った強化皮と呼ばれる
ものがあります。
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蛇皮は三線本来のスタイルでニシキヘビの皮を用いています。ニシキヘビの皮をご禁制の品と勘違いされている方もいるよう
ですが、ワシントン条約で輸出入が規制されているだけで、締結国両者の監督官庁のしかるべき許可をとれば輸出入ができます。
ギターに使われるハカランダ材と一緒です。旅行のお土産品として買ったものを、無許可のまま輸入しようとすると税関で没
されるのです。ニシキヘビの皮は高級なものほど鱗が細かいと言います。蛇皮ははじめのうちは光沢もなく毛羽立っていますが
使い込むうちに艶々といい感じになってきます。三線においてはこの皮をかなり強く張ります。使用しているうちに割れてしま
うことがありますが、これは仕方がありません。割れたら張りかえるのが基本です。特に日本本土では、冬場はかなり乾燥しま
す。湿度の多い沖縄においても割れることがあるこの蛇皮ですので、本土においてはより管理に神経質になる必要があります。
ちなみに僕は、定期的に爬虫類皮の靴に使うクリームを薄く擦り込んで潤いを持たせています。
プラスチック皮は、見栄えは安っぽいですが、強度では本蛇皮の比ではありません。以前、コザにある照屋三味線店(照屋林
助、りんけんバンドの照屋林賢ら、照屋ファミリーの家系の三線ショップ)で聞いた話ですが、かつてりんけんバンドは本土
ツアーの際に蛇皮の三線を持参していたそうです。ところが、ツアー中に皮が割れるアクシデントが多く、今ではプラスチッ
ク皮のものを持っていくそうです。はっきり言って音は蛇皮とプラスチックで差がありません。三線の場合、音の善し悪しは
棹で決まると言われています。ライブ志向の人はプラスチック皮の方が良いでしょう。強化皮のものは、蛇皮の質感とプラス
チック皮の強度を兼ね備えていますが、トータルで皮の厚みが増すためか音の抜けはもうひとつです。練習用と割り切って
使いましょう。
● 弦とチューニング
ポイント1: 調弦と書いて「ちんだみ」と読む
ポイント2: 歌い手の声に高さを合わせる
ポイント3: 変則チューニングは当たり前?
ポイント4: 一番太い弦が一の糸
ポイント5: 「安里屋ゆんた」「十九の春」「ハイサイおじさん」「島唄」は本調子
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三線のチューニングは調弦と書いて「ちんだみ」と言います。ギターと大きく違うのは、音の高さを歌い手の声に合わせるため、
最初にこう合わせるという決まった約束事がないことです。もちろん、弦3本の音の並び方の法則はあります。
◇本調子
スタンダードなものは本調子といいます。中央の弦である中絃(なかぢる)orニの糸がルートとなり、太い弦の男絃(うーぢる)or
一の糸、細い弦の女絃(みーぢる)が五度の音の関係となります。具体的には以下のようになります。
男絃 中絃 女絃 実用性
G C G △
G# C# G# △
A D A ○
A# D# A# ○
B E B ○
C F C ○
C# F# C# ○
D G D △×
要はキーがEなら真中をEにして、上下をBにすれば良いのです。しかし実際のところ、キーCはきついです。弦をかなり緩く張る
ことになり、音がデロンデロンになります。反対にキーGは弦の張りが相当強くなり一番細い女絃が切れてしまいがちです。
そこで実用性をそれぞれ△、△×と記しました。本調子の場合、キーは下でD、上でF#が実用範囲です。ちなみに有名な八重山
民謡の「安里屋ゆんた」、沖縄民謡の「十九の春」、喜納昌吉の「ハイサイおじさん」、BOOMの「島唄」は本調子で演奏します。
◇ その他の調弦
上記のような訳なので、他のキーの場合は別パターンの調弦が必要となります。キーがGより高い場合はニ揚げを用いることが
多いようです。男絃と女絃がルート、中絃が5度の関係になります。本調子を基準にすると中絃を一音上げた調弦ということなり
その名があります。
男絃 中絃 女絃 実用性
G D G △
G# D# G# △
A E A ○
A# F A# ○
B F# B ○
C G C ○
八重山民謡の「月ぬ美しゃ」はこのニ揚げで演奏されます。
この他、「ナークニー」、「カイサレー」、「海のチンボーラ」などでは女絃を本調子から一音下げる、三下がりという調弦を用います。
ブルージーな響きが得られます。こういったバリエーションについては、ギター経験者であれば、三線に慣れるうちに理解できる
範囲だと思います。実践の中で身になるでしょう。
● 三線のタブ譜工工四(クンクンシー)
三線の楽譜は工工四(クンクンシー)という、漢字で書かれた、どちらかというとタブ譜に性格が近いものです。最初は違和感が
ありますが、すでにギターを弾ける人の場合、慣れれば読めるものです。僕の場合は、そのままリアルタイムで読むと時間がか
かるので、自分でギター風のタブにおきかえることから始めました。島唄のレパートリーを増やすには、市販の工工四を買うの
が手っ取り早いこともあり、工工四には慣れておくべきだと思います。僕は、「耳コピー」できるものは耳でCDなどから音をとり、
とりづらいものは工工四のタブ化作戦を併用してレパートリーを増やしていきました。
● 糸巻きの操作
ポイント1: 糸巻きは範(からくい)と呼ぶ
ポイント2: 弦を軸に隙間なく巻く
ポイント3: 折れ易いので注意必要(折れたとしても驚かない=消耗品)
三線の糸巻きは範と書いて「からくい」と読みます。ギターのようなギアがないため、ジャストのピッチを得るのは容易ではあり
ません。三線はフレットがなく、元々音程に多少なりとも曖昧さがつきまといます。チューニング・メーターと睨めっこしてい
ると、いつまでも調弦が終りません。耳で違和感を感じないレベルで妥協しましょう。はじめのうち誰もが経験するであろう
ことは、いきなり範が緩んでしまうことです。しっかりとした三線を購入しているのであれば、それは楽器の不具合ではないで
しょう。弦が軸の細い側から隙間が空かないようにしっかり巻きつけられていないと、糸蔵の壁を横に広がった弦が押すような
形となり、範が緩んでしまうのです。この点に注意すれば、問題は解決するはずです。
● 右手のスタイル
「爪? ピック? それとも指?」
ポイント1: 一度は爪にチャレンジすべし
ポイント2: 民謡歌手でも千差万別
三線の教則本やビデオを見ると、右手のピッキングには爪(「チミ」と読む)を使用するよう指導があるはずです。この爪ですが、
本土の人間からすると、第一印象的にはかなり奇妙な物体です。これを使うと実際の指の位置は弦から遠のくわけですが、指の
小さなストロークでも爪の先端は大きな動きをするので、速弾きにも有利ということらしいです。かつてブルーグラスのクロス
・ピッキングに興じた僕にとっては、速弾きに有利かどうかは大きな問題ではないのですが、沖縄民謡の三連のグルーブはこの
大きな爪の動きで作り出されているような気がします。ちなみに三線は基本的にダウン・ピッキングのみです。親指ダウン・
ピッキングで知られたマーシャル・タッカー・バンドの故トイ・コールドウェルのにも通じますね。さて実際、沖縄のウタサー
の演奏を見ると、ピックを使っていたり、指で弾いていたりと千差万別です。一通り試してみて自分に合うものを見つけ出せれ
ば良いのではないでしょうか。僕は爪とピックの両方を使っています。
● ピックアップ・システム

左から: McIntyre Model#BT-101,audio-technica ATL180,audio-technica ATL180をつけた三線
ポイント1: 簡便なのはコンタクト・タイプ
ポイント2: 音色重視なら小型コンデンサー・マイク
ライブ志向の方なら必ず気になるピックアップです。残念ながら三線専用のピックアップはありません。市販のコンタクト・
ピックアップを使用するのが手っ取りばやいです。最近のものではマッキンタイヤーのバンジョー用が良いようです。コンタクト
・ピックアップの場合、表側の皮の、駒の近くの部分にパテか両面テープで貼ることになります。蛇皮の場合、鱗の上に貼ること
になるので、取り外すときのことを良く考えましょう。剥がすときに鱗が一緒に剥がれてくるかもしれません。貼りつける場所は、
音を確認しながら好みのポジションを見つけてください。PAやアンプに通すと、実際に耳で聴く生音よりこもって聞こえるかもし
れませんが、胴内部の響きを拾ってしまうことが原因のようです。プリアンプやEQで音質調整する必要があるでしょう。
音質にこだわるなら、ピックアップよりも管楽器などに取り付ける小型のコンデンサー・マイクが重宝します。クリップ付きの
マイクであれば、三線の場合は手掛(ティーガ)に装着できるので便利です。手掛は素材的には柔らく、不安定な印象を受けますが
、実用面で大きな問題はございません。大音量のバンドでなければフィードバックに悩まされることもさほどなく、便利だと思い
ます。僕はオーディオテクニカのATL180というコンデンサー・マイクを愛用しています。
● ストラップは?
ポイント1: ステージ・パフォーマンス重視の向きには必要
ポイント2: 裏の皮と体を密着させない
ギターの場合、クラシックの世界を除くと、立って演奏する際にはストラップを使用します。三線の場合、立って演奏する場合で
も正式にはストラップを使用しません。教則本などで確認できますが、腰に引っかけて抱えるようにします。もっとも、最近では
パーシャクラブの新良幸人のように、ストラップを使ってロック風のアクションで演奏する三線プレイヤーもいます。楽器に装着
したピックアップや小型コンデンサー・マイクで音を拾える時代です。視覚的なことを考えるとストラップを使うのはありでしょ
う。ちなみに僕もストラップ使用者です。こんな感じで三線にくくりつけています。
なお三線は胴の裏面の皮も音作りに重要な部分です。ストラップで三線を演奏する場合、裏の皮が体と密着して振動を妨げないよ
う気をつける必要があります。
● 弦の交換
ポイント1: 弦は長持ちする
ポイント2. 張り替え後の音の安定に時間を要す
弦の交換方法は教則本などを参照してもらうとして、ここで言いたいことは交換の時期です。三線は普通に使用していると弦は
そう簡単に切れません。金属を使用しているわけでもないので錆びても来ません。ギター弦のように「死んだ」状態が耳にはっきり
わかることもありません。何ヶ月も使用するのが一般的なようです。僕は、ピッキングによる弦のほころびが極端になってきたら
交換しています。交換したての頃は調弦が安定しないので、ライブ直前などには弦交換をしないのが賢明です。
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